【教育留学レポート#2】モチベーション研究は私自身をモチベートした〜留学に興味がなかった私の留学体験記〜

 目次

  1. 自己紹介
  2. 現地教育活動報告
  3. 今後に向けて

自己紹介

1.名前、所属、_期生

鈴木茉里、津田塾大学学芸学部4年、トビタテ3期生(世界トップレベル大学等コース)

2.私の”教育留学”

私は、「誰かに何かを教える」ということに興味を持っていました。大学は英語が好きだからという理由で英文学科へ入学。その後大学1年の春に、初めてのアルバイトで塾の講師を経験しました。私の担当していた中学生の多くが口を揃えて「英語へのモチベが上がらない」と言っていました。このエピソードが一つの転機となり、「学習者が学習に対してもつモチベーション」について関心を持ちはじめました。

こうして私の大学で「英語学習者のモチベーション」についての研究を、教育学の視点から学んでみたいと考えはじめました。しかし残念なことに、私の大学には教育学部がないため、どこか別の場所で学ぶ必要がありました。

その一方で、このテーマに関心を持ち始めた頃、周囲の留学経験のある友人からの影響で、海外で勉強をしてみたいと思うようになりました。そしてそこから学部在学中に、せっかくなら何か大きな経験をしてみたいと考え、留学への準備を始めました。

モチベーションに関する研究は、海外で進められているということもあり、留学を通して、「英語学習者のモチベーション」に迫ろうと考えました。またトビタテ!留学JAPANに応募する際に、実践活動をする必要性があったことから、日本語のクラスアシスタントをすることを決めました。こうして、私の留学のテーマは学部の授業で「理論の側面から」、日本語のクラスで「実践の側面から」モチベーションに迫るということに決めました。

現地教育活動報告

1.活動国、地域

イギリス、ヨーク

2.活動受け入れ先

ヨーク大学 教育学部(University of York, Department of Education)

大学の協定校留学の制度を利用してこの大学に留学しました。一度、夏の語学研修のプログラムで訪れたことがあり、素晴らしい勉強環境、美しい街並みに惚れて、長期留学先に選びました。

また、当大学の教育学部はイギリスでも評判が高く、モチベーション研究を効果的に進めることができました。留学生の割合も高く、国際色がとても豊かな大学です。

リンク: http://www.york.ac.uk(英語)

3.活動内容(#タグ付け推奨 ex. #英語教育、#異文化理解、#幼児教育…)

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教育学部で共に学んだ様々な国の留学生たち

主な活動内容は2点です。1点目は、教育学部の授業で言語教育、教育心理学、特別支援教育、英文学作品の授業を専攻しました。私の最も関心のある、モチベーションに関しては、教育心理学の授業で学びました。子供が学習へのモチベーションを高めつつ、非行に走りにくくするプログラムというものがイギリスには導入されていました。この授業を取るまで、私はこのプログラムの存在を知らなかったのですが、Social and Emotional Aspects of Learning (SEAL) programmeというものが多くの学校で導入されていて、貧しい家庭で育った子供や、発達障害を抱えるものの普通学級に在籍している子供に有効であるということを学びました。イギリスでは公立学校でも学校の意思決定が尊重される傾向にあり、日本の学習指導要領のような強い規則がないため、このようなプログラムを実践できるということも同時に学びました。そのため、現在の制度的にこのようなプログラムを導入・実践することは難しいのではないかと思われますが、逆にどのようにしたら日本でも実践することができるのか今後は考えていきたいです。

日本で学んでいた言語教育系の授業や英文学に関する授業も履修しました。言語教育の授業は日本の授業でも履修しておりましたが、再び学びました。日本では、理論を中心に教授が一方的に話す授業でしたが、ヨークでは実践的な教え方について学ぶ内容でした。また、文学の授業もディスカッションが中心で、常に学生が授業の中心にいる学び方を経験しました。この経験から、学生主体の学び方の重要性について再認識し今後日本の学校現場でも積極的に取り入れていくべきではないかと考えました。

私の専門外の特別支援教育では、イギリスの教育制度の良さを生かした部分をたくさん見つけました。例えば、イギリスでは家庭内教育が認められていたり、教育学を学ぶ大学生を中心に、大学では支援を必要とする中学生や高校生を支援するというボランティア活動が私のいた充実していました。これらは日本に今後取り入れたらもっと特別支援学級と普通学級の溝が縮まり、互いに協力することができる社会になるのではないかと考えました。

2点目は実践活動として、日本語の授業でティーチングアシスタント(以下、TA)をしたことです。日本語を勉強しているヨークの大学生に、なぜ日本語を学びたいと思うかという質問を学期の始まる前と後とに聞きました。そのインタビューの結果、「日本に興味があるから」「日本の文化について日本語で学んでみたいから」という理由で勉強をしている人が、最も継続的に勉強を進めていることがわかりました。

4.活動を通しての私の”学び”

当初私はモチベーションを研究するために留学をしました。学部で学んだ理論的側面や、TAをしていた時のインタビューを通して、「誰かとコミュニケーションをとりたいから」というモチベーション、目的をもっていることが、学習を継続させることができると言えるのではないかと思いました。

また、同時に普段何気なく使っているモチベーション、いわゆる「モチベ」は、一言で語れないようなとても奥深いものがあるということに気がつきました。心理的な側面のため、個人差が大きく影響してるものであると同時に、環境の変化も心理面に関わっているということがわかりました。例えば、モチベーション研究から派生して、willingness to communicate (コミュニケーションを取ろうとする態度; WTC)というものがあるのですが、学習者が誰かと外国語を使ってコミュニケーションを取ろうとするには、様々な要因が影響を与えているということが明らかになっています。言葉を話すことに不安を感じていれば、コミュニケーションを取りたくても取れないという状況になってしまったり、コミュニケーションの相手に対する考え方ひとつでもこのWTCは変化してしまうようです。このように、モチベーションには様々なものが互いに影響し合っていて、どの部分が何に影響を与えているということを一言で表すことはほぼ不可能であるということがわかりました。

少し悲しいことに気がついてしまったように思われがちですが、私自身はこの分野の研究に対して前向きに考えています。というのも、どのような場合に人はどのように感じるのかという、ミクロな研究も重要であると考えるからです。もちろん、大人数からデータをとって傾向を探るのも重要だと思いますが、その部分に関する研究には限界があるように感じられるため、より細かな視点での研究が今後はより大事になると考えます。

私の教育留学での”学びの価値”

私の教育留学における”学びの価値”は3つあります。

・様々な国の教育制度を現地で学べたこと

様々な国の教育制度を学んだことで、何が日本と異なるのか、なぜそれが日本には導入できないのかということを客観的に考えられるようになりました。

・専門分野の追究ができたこと

留学を通して、英語教育や教育について幅広く学ぶと同時に、私の専門分野であるモチベーションに関して深く学べました。次の章で述べますが、どちらも今後の研究や キャリアに大いに役立つものとなりました。そして現在では、自分の留学経験から「留学」を通した言語学習というものに関心を持っています。留学を通して、 言葉を話す時のためらいや、言葉をもっと学びたいと思うモチベーションはどのように変化するのかなどについて、研究を進めています。

・自分が将来実現したいことが明確になったこと

留学前は、教育に関心がある=教員になるしかないと思っていたのですが、教育実習などを通して、本当は教員になりたいわけではないことに薄々気がついていました。しかし、留学をして自分の専門外の授業での学びから、もっと広く教育について扱える仕事に就きたい、学校以外の学びを積極的に支援できる場所で働きたいと考えるようになりました。このことから、教育を学んだ成果は教員になることだけではないことだと言えると思います。

今後に向けて

留学を通して、モチベーションについて研究してまいりましたが、モチベーション理論の対象の広さや、奥深さに気がつくうちに私が関心を持つ部分が少しずつ変化していきました。今後は、モチベーション理論の中でも言葉を学ぶ際の不安について、留学という側面からアプローチをしていきたいと考えています。なぜ、留学の側面から不安について研究するのかというと、これは自身の留学経験からこの領域に関心を持ったからです。ある研究では、長期の留学を決定する際に不安に感じることは、主に「語学力、資金力、将来への計画性」であると明らかにされています。このことから、言葉を使うときの不安が留学を決めることに対して1つの決定的な理由となっていると言えると思います。私は研究を通して、言葉を使うときの不安を減らすことができ、長期留学にチャレンジする人が増えればいいなと考えています。

しかし、私の将来取り組みたいことは留学に関わる部分だけではありません。私の夢は、学びに対して意欲を持っている全ての人を支援できる、「いざ学ぼうと思った時に自ら学べる社会」を作ることです。具体的には、2つ取り組みたいことがあります。

1つ目は、学びたいという気持ちをみたすために、奨学金の制度を変えることと、留学を推進していくことです。「すべての学びたい」という気持ちを支援するために、教育格差を埋めていくことがやはり必要だと考えます。例えば、自身の留学経験として、奨学金を得て留学をし、たくさんの人と知り合ったことで私自身たくさんの刺激を受けることができました。今後も、たくさんの海外に行って学びたいと自発的に考える人を支援する奨学金プログラムを進めていきたいです。また、海外だけでなく、国内での教育格差も大きく議論されています。日本に住むすべての人の学びたいというニーズを満たすためにやはり奨学金の制度を変えることは不可欠なのではないかと考えます。

2つ目は、学びたいという気持ちを生み出すことです。例えば、上で述べたようにイギリスではSEAL programmeを導入しています。留学中の授業でこのことについて学んだ際に視聴した、このプログラムを受講した経済的境遇や社会的境遇が恵まれていない子どもたちへのインタビューで、彼らは自分に自信を持ち自分の興味にまっすぐでいるように感じられました。日本の社会に適した形でこのようなプログラムを実施すれば、生涯にわたって学びたいという気持ちを持つ人が増え、より日本社会が良い方向へと進むのではないかと考えます。そして、そのような人たちの生涯学習を支援する環境づくりをしていきたいです。現在、高齢化が進む社会で地域の学びの場はより重要になっているように感じられます。世代を超えた学びの輪を今後広げ、現在直面している地域の様々な問題点を解決していきたいと考えます。

このようなことに取り組むために、私は教育行政に携わりたいと考えます。日本のソフトパワーに関する部分を一手に引き受けているこの行政に強く惹かれ、学びから日本に住む全ての人を幸せにしたいです。今から2年後の大学院修了の後、私は文部科学省で、上で述べ4つのことを中心に取り組んでいきたいと考えます。

しかし、私にはまだ教育に関する知識が少ないように感じます。自分自身がもっと学び、その後自分の実現してみたいことをライフワークとしたいです。大学院では、自分の関心を持っている「留学を通した語学学習」の効果について研究を進めると同時に、日本の教育について広く学びます。これまで学んだ教育はイギリスのコンテクストであったため、それらを日本に当てはめてみたらどのようになるか、また日本の教育の強みはどこか、逆にどのような部分が問題とされているのかといった部分に焦点を当てながら学ぼうと考えています。

この人に、留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ