ホスピス緩和ケアの理念と世界事情

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”たとえどんなにつらい現実に直面しても、決して人生をあきらめないでほしい”
大きな転換期の今、何ができるのか?

皆さんは、「ホスピス」「緩和ケア」と聞いたら何を考えますか?
ホスピス緩和ケアの理念は「身分や国籍、宗教に関係なく誰にでも手を差し伸べる平和的な考え方」で、対象者は「今まさに孤独に苦しんでいる人達すべて」です。まさに死に直面する人だけでなく、日常生活で重い病と闘いながら生きている人達、LGBT、異民族、旅人、犯罪者とその家族、知的障がい者など、「苦しみを理解されにくい、または、誤解されやすい人たち(the disadvantaged)」にも温かいまなざしを、という考え方が根本的にあります。本当に必要な人に適切なケアを、これは本来のホスピス緩和ケアの医療のあり方であると考えられます。

しかし、現在日本の制度上では、緩和ケアの対象者は「がん/エイズ」、最近追加された「心不全」に限定されています。留学中、各国の緩和ケア領域のベテランの医療従事者にまぎれて英国の大学院で緩和ケアの講義を受けました。彼らは、日本では決して耳にすることになかった”the disadvantaged”について当たり前のように討論していて恥ずかしかったです。他の国では、緩和ケアの対象者を限定していません。今まさに苦しんでいる人達は、統計的に「がん/エイズ」が多いかもしれませんが、彼らがすべてとは言い切れないことは明らかかと思います。

日本では、「緩和ケアは安楽死でしょう?」「緩和ケア病棟やホスピスは死ぬ人のためでしょう?」という一般的な認識は、実は他国と比べて少々遅れをとっています。「死」など、プライベートな話題を避ける習慣の日本ですから当然かもしれません。そんな文化の根づく日本でも、ここまで発展してきたのは先輩たちのすごい努力の積み重ねがあったからこそだと実感しています。どの国でも乗り越えてきた壁なので少しずつ頑張るしかないのだと思います。

とはいえ、日本だけでなく、世界でも統計やエビデンス主義の医療が主流なので、今まさに孤独で苦しんでいる人達への医療は見逃されがちです。つまり、本当に必要としている一人ひとりの人生に寄り添う本来の医療のあり方は実現されていません。それでも今、世界は大きな転換期を迎えています。少子高齢化を迎え、個人の文化的価値観も多様化し、今まで当然だったはずのことが必ずしも当てはまらなくなってきたようです。医療でのホスピス緩和ケアは苦しみを緩和すること。そもそも苦しみ”suffering”とはその人にとってどんな意味があるのか。大きな宿題を持ち帰ることになりました。

ちなみに写真は、医療の分野でホスピス緩和ケアを築いたCicely Saunders のお墓です。彼女の意志を継いだ仲間たちが様々な課題に挑戦し続け、彼女の築いたホスピス(St. Christopher’s Hospice)は今では地域の人々の憩いの場になっています。http://www.stchristophers.org.uk/

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ABOUTこの記事をかいた人

Sae Shindo

トビタテ!4期生の理系コース(チャレンジ枠)。 病とともに生きる人々との出会いと別れを繰り返す中で、”最期まで自分らしく生き抜ける日常”を開発したいと強く願い、ホスピス緩和ケアに魅力を感じるようになる。さらに学びを深めるため、学部卒業後すぐに大学院へ進学し、大学病院での勤務との両立や留学準備にも勤しんだ。 留学では、現代ホスピス運動の発祥地である英国で、世界をリードする緩和ケアの講義やホスピスでの実践活動を通して、医療におけるホスピス緩和ケアの理念に基づく「実践」「研究」「教育」のあり方を学んだ。