学会発表ゼロ論文ゼロ結果ゼロの院生が研究留学する理由

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こんにちは。私は今年4月からアメリカ・ボルチモアで魚の脳神経科学の研究をしています。

留学先&期間:Department of Marine Biotechnology and Institute of Marine and Environmental Technology, University of Maryland Baltimore County 11か月

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ラボはこの建物の中にあります。よく家族連れが「水族館」だと思って入館してきます。

(画像出典http://www.mtech.umd.edu/news/press_releases/eoh_baltimore.html

留学先での研究内容は、簡単に言うと魚の「脳内物質」が卵や精子の形成機構にどんな影響を及ぼしているかを調べて、最終的に水産養殖技術へ応用できたらいいなというものです。

ちなみに日本では魚のタンパク質の機能を調べる手法を新たに作り出すことを目的として、二ホンウナギなどを用いて実験しています。去年の5月には二ホンウナギの産卵場調査に同行させていただきました。

(二ホンウナギ産卵場調査に興味のある方はこちら→http://unagi-hakase.jugem.jp/

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二次審査のプレゼンの表紙。ちなみに頭の上の魚はゴッコです。

留学先の研究内容の詳細を書くことはできないし、おもしろい研究を紹介している人は他のトビタテ生にたくさんいるので今回は「超低スペック研究者の自分」が研究留学をする理由を語らせていただきます。

「憧れ」から「決意」へ

まず、留学を決意した時のことを簡単に説明します。

去年の6月インターンのエントリーシートを書きながら自分の学生生活を振り返っていました。そこで出た結論は「留学してみたかったなあ」。修士1年でこの結論を出す自分が情けなくなりました。

そこで、研究室の准教授の先生に率直に自分の思いを伝えてみました。

私「先生、あの、その、実は留学したいんです。あの研究留学的なの…。」
先生「おお、行けばええ。何をためらっとんのや!休学すればええ!」
私「私、強くなりたいんです、自分自身のレベル上げたいんです。修行したいんです…。」
先生「アメリカ行ってこい!」
私「」

このタイミングとほぼ同時にトビタテを見つけて、トビタテに採用されたら留学すると決意しました。自分はプライドがとても高い人間だったので、自分自身のことを人に相談することが大嫌いでした。でも、このとき先生に話してよかったです。私は留学すると決めて「くだらないプライド」を捨てました。

書類提出の1週間前までチェコでのサマープログラムに参加し、提出の日は朝6時集合でサンプリング、二次審査プレゼン準備も「なんで手描きにしたんだろう?」と自分を問い詰めましたが何とか完成させトビタテ4期生に滑り込みました。

この選考準備もプライド高き私だったら、1人でもくもくとやりましたが、プライドを捨てた私は後輩や同期に頭を下げお絵描き、色塗りを手伝ってもらいました(気づいたら、色塗り部隊、下書き消し部隊みたいになってて工房っぽくなってた。)

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我が後輩ありがとう。

そんな私の研究者?としてのスペック

はっきり言います「学会発表ゼロ論文ゼロ結果ゼロ」ぴゃ~

私は学部時代の終わり頃から新たな研究テーマを頂いて研究を進めていました。
しかし、色々な原因が重なって実験は失敗の連続。全く結果を得る事ができませんでした。

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こんなにウナギに愛情注いだのに。

思えばこれまでの人生で勉強も運動もベストでは無いけど、こなすことができた私は、かなり落ち込みました。

後輩の指導も、先輩の手伝い、掃除当番もウナギの世話も、先生とのディスカッションも一生懸命頑張りました。思い詰めて実験のことをバイオ系研究者の間で有名なWeb上の掲示板「●io technical●ォーラム」に投稿したこともあります(さっき、あるワードで検索したら一番上にヒットするトピックに進化していた!)。

いや、そんなやつ研究留学行って大丈夫かよ

私もはじめはそう思っていました。でも私はプライドを捨てたので、たかが2年間の大学の研究生活しか経験していない私が海外の研究生活で失うものなんて何もないし恥かいていいじゃないか自分のために研究留学しようこれは修行だ!と捉えることができたので、逆に調子に乗り私こそ行くべきとか考えていました。

(※だから私の研究では日本の産業界を変えることはできないかもしれないけど、レベルアップした私が将来研究者として日本の産業界で大活躍するので私に投資してくださいというスタンスでトビタテを受けました。)

そして無事にトビタテ4期生として採用されアメリカへトビタちました✈

才能や実績が無いから必死で行動することにした

お客様扱いされるのは絶対に嫌だし、かといって自分は才能も実績も無いからアメリカのラボで「もがきまくって」います。もがいてないと埋もれちゃうから。ここ2か月の例を少し紹介します。

その1 自分の(日本での)修士研究のプレゼンを聞いて欲しいと頼み込んだ
「自分の修士の研究は全く進んでいない。アドバイスが欲しいのでプレゼンをしたい」と懇願し、忙しいラボの皆に聞いてもらいました。ラボの皆はそれはそれは実績のある方々で、「進んでいない自分の実験」のプレゼンをするが正直死ぬほど恥ずかしかったです。最初は15分だけ…と言っていたのに結局2時間くらいディスカッションしました。キツイ意見もたくさんもらって、自分はvisiting assistantだけど、このラボの一員なんだということを実感することができました。

その2 やるやる星人になった
どんな実験でも「やってみたい!」「見学したい!」と興味津々でいたら、自分の使う予定の実験技術+αを1か月でひと通り学ぶことができました。そして、さらに「これは知ってる」「これはできるようになった」「これは知らない」とはっきり言うことで、短期間でも信頼関係を築くことができました。現在は、他の研究者のアシスタントもしています。

その3 学会発表と論文投稿したいとラボの研究者へ宣言した
言った後に「言ってしまった」と思ったけど。傍から見たら、日本から来た院生が何を言ってるんだという感じだけど。私の研究、自分の日本での研究の続きでも何でもないんですね。だからこの11か月の勝負なんです。相当チャレンジャーな発言した分、本気度が伝わりました。実際に、ラボのある方から「あなたには時間がないんだよ、いつまでその実験に時間かけてるの?」と若干キツめのお言葉を頂いて「本気キターー」と嬉しくなりました。

スゴイことでも何でもないけど、行動するって大事だなと改めて思いました。昔のプライド高き私だったら実行しなかったと思います。

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ラボの皆でHappy hour🍻

「自分」のための留学

私の留学で得られる研究成果は日本の水産養殖技術の向上につながらないかもしれないし、日本の産業界に何ひとつ影響を与えないかもしれない。でも、この留学でどんな困難にも自分のスキルで立ち向かえるような力を身につけて、英語力もアップさせて、たくさんの研究者に出会って自分の思考回路も叩き直して、自分が日本のバイオ産業界になくてはならない研究者になれるよう、たった11か月の修行を過ごしていきたいと思います。単に留学したから自分はすごくなるなんて思っていません。留学は一つのツールです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

Sakura Tanaka

DSC_3749-compressor1992年横浜生まれ。National Parkのレンジャーになることを夢見て農学部を目指すも(?)なぜか水産学部でウナギのお腹をさする日々へ。生物の力でQOLを向上させる製品を創る職に就くことが中期目標。北海道大学大学院水産科学院海洋応用生命科学専攻修士2年休学中。ミックスナッツが好物のため吹き出物に悩まされる。トビタテで聞いた「Disるよりcontribute」という言葉に激しく同意。ルームメイトはヒッピーと2匹の猫。

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