オーストラリアからのトビタテ便り 3 ~ 憂鬱なPhysicistがみる太陽電池の世界

図15

第3回「太陽電池の家族を紹介しよう。」

さて、今回は色々な種類の太陽電池を紹介していきます。

 

本当に無理って?これだから、理系男子はダメなんだって?(実際に言われた)

大丈夫!太陽電池の家族なんて、サザエさんの磯野家みたいに個性豊かでおもしろいですから。

まあ、あそこは結構複雑な家族構成でもありますがw

自然に溢れすぎな大学。もはや山(笑)

自然に溢れすぎな大学。もはや山(笑)

ヘビとも交流できるよ

ヘビとも交流できるよ

上から見るとこんな感じ。森すぎて、母が悲鳴を上げた。

上から見るとこんな感じ。森すぎて、母が悲鳴を上げた。

さて、まずは第2回にも登場したこの図を見ましょう。

太陽電池の分類 (引用:産総研 HP)

太陽電池の分類 (引用:産総研 HP)

これは太陽電池の分類を表したものです。[1] このうちから、良さそうなものを詳しく説明していきます。

 

(1) 【シリコン系】 みんな大好き、単結晶シリコンと多結晶シリコンの太陽電池

まずは、上のシリコン系から、単結晶シリコン多結晶シリコンを見ていきましょう。そもそも、シリコン系の太陽電池がどういうやつかって言ったら、屋根に付いてたりして、一番目にするやつです!

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そして、そのうちの単結晶シリコンと多結晶シリコンというわけです。比較した写真を見せるとこんな感じです。

図7

まあ、パッと見て違う点は模様です。単結晶シリコンはシンプルなのに対して、多結晶シリコンは独特の模様をしています。なんだか、中学2年生の男子が好みそうですね。でも、邪悪な力とかありませんよ。彼は発電しかしませんから。

では、違いを詳しく見ていきましょう。

 1.1 単結晶シリコンと多結晶シリコンの太陽電池の違いって?

突然ですが、あなたが「アイスクリーム食べたいな。」と思い、スーパーに行ったら、スーパーカップとハーゲンダッツがあったとします。そこで、「スーパーカップは安いけど、ハーゲンダッツの方が美味しいんだよな…。」と、迷うわけです。お金を取るか、味をとるか…。

そうなんです、単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池の違いはそんな感じです(笑)単結晶シリコン太陽電池は変換効率が高い(~20%)けど、生産コストが高いです。逆に、多結晶シリコン太陽電池は、単結晶シリコンの太陽電池に比べて、生産コストが安いけど、変換効率は低い(~15%)です。[4]

また、この二つの大きな違いはその製造過程にあります。

単結晶シリコンで太陽電池を作っていると、単結晶シリコンかいらなくなったシリコン粒が出てきます。で、それを再利用して、作ったのが多結晶シリコンの太陽電池です。要は、多結晶シリコンの太陽電池は単結晶の太陽電池の製造過程で生まれた、いらないものからできたやつなんです![5]

で、変換効率が悪くなってしまう原因は結晶構造の違いです。

図8

 

上図を見ると、単結晶シリコン型は規則正しくケイ素(Si)が並んでいます。このSiがきちんと並んでいると、それだけ発電ロスが少ないです。それに対して、多結晶シリコン型は、Siの配列が乱れています。よって、これが変換効率を下げている要因になっています。まあ、学校の授業と同じで、みんな席についてたら授業はすんなり進むんですが、席を立って歩き回るやつが多いと、なかなか授業が進まないわけです。

 

1.2 構造

単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池の構造はほとんど同じです。また、発電原理も第2回で説明した、p型半導体とn型半導体の接合(p-n接合)です。忘れた方はチェックしてくださいね!

一応、構造図を示すとこんな感じです。

図9

 

(2) 【化合物系】規格外の男、Ⅲ-Ⅴ族系(GaAs系)太陽電池

続いては化学物系についてです。そのうちのⅢ-Ⅴ族系(GaAs系)太陽電池というものを見ていきます。

さて、規格外という言葉を使わせてもらいましたが、何が規格外かといいますと、その変換効率です。なんと、変換効率は30%以上で、場合によっては42%まで跳ね上がります。[4] そんな規格外なGaAs系太陽電池です。そして、このGaAs系太陽電池は宇宙で活躍しています。例えば、第1回で紹介した人工衛星に使われています。

 

2.1 そもそも、GaAs系って何?

GaAs系、またはⅢ-Ⅴ族系とも言われます。まず、第2回にも登場したこの周期表を見ましょう。

図10

この周期表で縦の列ごとに見れば、1族から18族まであるのがわかると思います。この族ごとによって、性質も似ています。そして、このうちの第13族元素をⅢ族系元素といい、第15族元素をⅤ族系元素といいます。このⅢ族系元素とⅤ族系元素の組み合わせた半導体がⅢ-Ⅴ族系化合物半導体です。例えば、GaAsやInPです。こういった半導体を用いた太陽電池がGaAs系(Ⅲ-Ⅴ族系)太陽電池と言います。

 

2.2 規格外の理由は効率的な分担作業

さて、変換効率が20%程度の無機太陽電池に比べ、どうしてGaAs系太陽電池は規格外なのか説明します。

まず、説明するのは太陽光についてです。太陽光は名前の通り、太陽からの光なわけですが、その光には色々な波長の成分を含んでおり、それを太陽光スペクトルといいます。

SunLightSpectrum-280-2500nm-J

これが、その太陽光スペクトルの波長ごとの光の強さを示したものです。縦軸は光の強度で横軸は波長になります。波長について簡単に説明すると、光は波なんです。で、その波にも長さがあるんです。その長さによって光の色が違ったりします。ちなみに人の目で見える光を可視光といい、その波長域は380~750nm程度です。[6]

そして、太陽電池には使っている物質によって、どの波長域の光を吸収して、電気に変えるかというものがあります。もちろん、その吸収の波長域が広いほど、電気に変えられる範囲が広いということなので、多くの光エネルギーを生み出せるということになります。また、シリコン型の太陽電池だと、300nmあたりから1200nm程度までの波長域を吸収するそうです。[7]

では、GaAs型はどうかというと、こうなります。[8] 図11

まず、見て欲しいのが太陽電池の構造。目を疑うでしょう、そんなのずるいと思うでしょう。これは多結合型太陽電池と呼ばれて、p-n接合が3つあります。そして、この3つがそれぞれ光を吸収する波長域が異なり、役割を分担しているため、規格外の変換効率を記録しているんです。すごいチームワークですね。ちなみに、単純に結合の数を増やせば変換効率も上がるんじゃね?って思いますが、実際は接合の兼ね合いなんかで、ロスが発生して、そううまくいかないそうです。

 

2.3 おまけ: 毒性にご注意を

さて、実はGaAsには毒性があります。ヒ化ガリウムと呼ばれるこの物質には発がん性のリスクがあると言われています。

また、今回は取り上げなかったCdTe系太陽電池に使われているテルル化カドミウム(CdTe)の有害性は議論されています。ただ、CdTe太陽電池自体には有害性が少ないと言う報告があるそうです。[9] けれども、日本では毒性を懸念して、製造が中止しています。

 

(3) 【有機系】 将来有望な有機太陽電池

さて、最後にご紹介するのは有機太陽電池です。この有機太陽電池の特徴を簡単に言うと、他の太陽電池と比べて、低コストですが、変換効率が高くなく耐久性が悪いんです。なので、このデメリットを改善できれば、低コストの化け物みたいな太陽電池になるんじゃないかなって思ってます。ちなみに自分の研究分野ここに入ります。

 

3.1 有機と無機の違いって?

まず、話すべきは有機物と無機物の違いでしょう。簡単に言うと、炭素(C)を含むと有機化合物で、含まないと無機化合物です。しかし、例外として炭素を含んでも無機化合物に分類されるものがあり、例を挙げると一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)です。身の回りにあるものの多くは有機物で、例えば紙もそうだし、人も有機物でできています。

また、この炭素は非常に面白く、鉛筆の芯も炭素の塊なら、ダイヤモンドも同じ炭素の塊です。ただ、結晶構造が違うだけで、あれだけ価値が違うんですね。まるで、同じ人間なのに、イケメンと顔濃い人がいるみたいでおもしろいですね。

 

3.2 魅惑的な色素増感型太陽電池

不思議で魅惑的な女性が好きなあなた。気を付けてくださいね、ハニートラップかもですよ。でも、色素増感型太陽電池の魅力には浸かってください。

さて、そんなわけで色素増感型太陽電池です(笑)この方、もう自分の中では女性みたいなイメージですが、色々すごいです。ちなみに変換効率は10%程度です。

まず、原理はこれもp-n接合型です。ちなみに、原理説明の画像を見つけましたので、引用させていただきます。[10] cell

こちらです。えーっと、原理はこの辺にして…。

まあ、この色素増感型太陽電池のおもしろさは様々な色に加工できる点です。

図12

右の写真のようにデザインなんかもできちゃうんですね。

 

3.2 ポテンシャルの高さが売りの有機薄膜太陽電池

さて、有機薄膜太陽電池です!低コストでフレキシブルな素材なんかもあり、高いポテンシャルのある太陽電池です。これがもろ自分の研究分野です。この有機薄膜太陽電池をより詳しく見て行くのは最終回の第4回にします。なので、今回は構造やどういった太陽電池があるかを説明します。

 

3.3 有機薄膜って何?

有機薄膜とは、有機半導体の薄い膜ですw

いや、そのままやんって言われるかもしれないですが、そうなんです。100nm程度の膜を作って、それが太陽電池になるんです。

 

3.3 構造

原理はショットキー型を除いて、p-n接合によるものです。そして、構造は色々あるんです。ざっと並べるとこんな感じです。

図13

ちなみに自分が学部生時代に研究していたのは上図のヘテロ型とバルクヘテロ型というものです。バルクヘテロ型はp型半導体とn型半導体が混ざった構造になっています。これによって、p型とn型の接合している面積が増えるので、変換効率も向上すると一般的には言われています。そして、今自分がオーストラリアで研究しているのはナノ粒子を使った有機薄膜太陽電池です。

 

3.4 印刷型太陽電池

最後に、うちの研究室で力を入れている太陽電池の一つである、印刷型太陽電池について説明します。どんなやつかというと、こういうやつです。

R2R video for winter school 2015 SD.mp4_000081881

見てわかるようにペラペラなんですね。まるで紙のようです。

この太陽電池はRoll-to-Rollというプロセスで作られた太陽電池です。色々な有機材料をフレキシブルなプラスチックの基盤にどんどん印刷していくことで完成します。こんな感じで。

Roll-to-Roll

Roll-to-Roll

変換効率こそ3%程度と低いですが、効率よく大きなスケールの太陽電池を作れるのが最大の利点です。また、普通に家庭で使ってるプリンターでも将来的に太陽電池が作れる時代が来るのではないかと思っています。楽しみですね。

 

第3回は以上で終了です。

どうでしたか?色々な太陽電池があって面白いでしょう?

ちなみに、太陽電池をそれぞれサザエさんのキャラに当てはめようかと思ったのですが、どうも色素増感型太陽電池の魅惑的な女性が浮かびませんでした(笑)まあ、サザエさんにはそういうキャラいませんよね。

 

さて、来週はいよいよ最終回です。自分の研究内容をお話しします。タイトルの「憂鬱」の意味もわかってもらえるのではと思っています。

 

では、また来週もお願いします!

 

質問、感想等がありましたら、お気軽にご連絡ください。

留学相談したい方は、留学codeからどうぞ

 

[1] 産総研 太陽光発電工学研究センター太陽電池の分類 https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/groups.html

[2] Gintech Douroシリーズ 高効率単結晶シリコン太陽電池: G156S3 http://www.gintechenergy.com/jp/index.php/products/cells/douro-series/douro-monocrystalline-silicon-solar-cell/

[3] 太陽生活 第5時限目 発電モジュール、メーカーによって何が違うの? その1(2/2)http://taiyoseikatsu.com/teachme/005/tm005-02.html

[4] 史上最強カラー図解 プロが教える太陽電池のすべてがわかる本 (著)太和田善久

[5] 株式会社ミカド電設 http://www.mikado-sc.co.jp/diary/solarPower-General/entry-1255.html

[6] Wikipedia 可視光線 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E8%A6%96%E5%85%89%E7%B7%9A

[7] Wikipedia 太陽電池 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9B%BB%E6%B1%A0

[8] 産総研異種材料を組み合わせた次世代多接合太陽電池を開発http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20140707/nr20140707.html

[9] カドミウム・テルル(CdTe)太陽光発電システムのライフサイクルにおける

環境と健康安全に関する科学的レビュー http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/matsuno/files/FS%20Review%20Report%20Japanese.pdf#search=’%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%AB%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%89%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%A0+%E6%AF%92%E6%80%A7′

[10] 色素増感太陽電池ホームページ http://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html

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