オーストラリアからのトビタテ便り 2 ~ 憂鬱なPhysicistがみる太陽電池の世界

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第2回 「太陽電池は今日も発電する。で、どうして?」

こんにちは。第2回は太陽電池の発電原理について見ていきましょう。

えっ、もう受け付けない、生理的に無理って?

まあまあ、そう言わずに見て行ってください。きっと人生の足しになりますよ。お願いしますよ、恋バナもありますから。

今年7月にシドニーで行われたオーストラリア トビタテ会。みんな1期生で理系(左から、物理学、海洋生物学、天文学)。みんな日本人で外国人顔(左から、フィリピン、インドネシア、中国)。

今年7月にシドニーで行われたオーストラリア トビタテ会。みんな1期生で理系(左から、物理学、海洋生物学、天文学)。みんな日本人で外国人顔(左から、フィリピン、インドネシア、中国)。

 

 (1) 太陽電池の分類

太陽電池の分類 (引用:産総研 HP)

太陽電池の分類 (引用:産総研 HP)

実は太陽電池には色々な種類があるんです。そして、ざっとまとめたのが上の図。[1] ちなみに自分の研究内容はこの中の有機半導体の分野に属しています。これらをより詳しく見ていくのは第3回に行う予定です。

 (2) 基本的な発電原理 p-n接合

さて早速、発電原理の説明に入っていくわけですが、色々な太陽電池が存在する中で、1番の基本となるのはp-n接合と呼ばれるものです。p-n接合とはp型半導体とn型半導体の接合で、これによって多くの太陽電池は発電しています。すごく簡単に太陽電池の構造を示すとこんな感じ。

簡単な太陽電池の構造図

簡単な太陽電池の構造図

p型半導体? n型半導体? そもそも半導体って何だよ?! といきなり、出てきたワードにパニックになっていると思うので説明していきます。

 

2.1 絶妙な男、半導体

やっぱり、極端と言うのは、いいわけではないですよね。男を例に挙げてみると、「イケメンすぎると他の女に取られそう。」「でも、ぶさいくな男は嫌。」という意見を持った女性も少なくないのではないでしょうか?そうなると、そこそこのイケメンを狙いたくなる。その妙が男を一番モテさせるんじゃないかと思うわけです。まあ、顔濃い人が語ったところで、本題に戻ると、そんな絶妙なイケメンが半導体です!

雑な説明すみません(笑)

おそらく、名前は聞いたことあるのではないのでしょうか。例えば、シリコンなんかは有名な半導体です。

さて、鉄や銅のように電気を通す物質のことを導体といい、逆にガラスのように電気をほとんど通さない物質を絶縁体と言います。そして、半導体はこの中間です。半導体は条件によって、電気を通したり、通さなかったりします。半導体はその妙な特性ゆえ、コントロールしやすく、ICを始め、多くのものに使われています。もちろん、太陽電池にも。

 

2.2 バンド図

さて、導体だの、絶縁体だの、半導体だの、と…。これらを話すうえで必ず付きまとうのがバンド図と呼ばれるものです。どういうものかというと、

図1

 

こういうものです。[2]

まず、青色の部分には電子が詰まっていて、ピンクの部分は何もなく空いているとします。そして、どの物質にも価電子帯伝導体と呼ばれるエネルギー帯が存在します。さらに、その間にあるのが禁制帯と呼ばれる部分です。ここには、電子は存在しません。また、その禁制帯の幅をエネルギーギャップ(Eg) と言います。

この図は何もエネルギーを与えられていない状態(基底状態)で、半導体と絶縁体の電子はすべて価電子帯に電子が集まっています。逆に導体の電子は、伝導体にまで及んでいます。

ちなみに、これはバンド理論と言うもので、このバンド図はかなり簡単に見えますが、実際はめちゃくちゃ奥が深いです(笑)

 

2.3 励起と励起子

2.2で説明したものは、何もエネルギーが加わっていない状態です。そして、エネルギーが加わると、励起(れいき)と呼ばれる物理現象が起きます。励起とは、エネルギーを受けることで電子が上の準位に上がることです。

図2

例えば、この場合。Eg以上のエネルギーを受けることで価電子帯にある電子は伝導帯に励起します。そして、価電子帯にはホール(正孔)と呼ばれるものが発生します。さらに、この電子とホールの対を励起子と呼び、まあ付き合いたてのラブラブなカップルみたいに行動をともにします。悲しい結末があるとも知らずに…。

 

2.4 n型半導体とp型半導体

純粋な半導体(真性半導体)に不純物を加えること(ドープ)によって、その性質が変化します。

では、不純物とは何か?何か汚そうな聞こえですが、重要な脇役です。具体的にシリコンを例に説明します。まず、この表を見たことがあるでしょうか?[3]

周期表

周期表

周期表と呼ばれるものです。学校の教室に定番でよく貼ってるやつですね。これを見れば、シリコンの素となるケイ素(Si)の原子番号は14ということがわかります。これに対して、不純物を加えるとどうなるかというと

図5

こうなります。[4] まず、原子番号15のリン(P)をドープした場合、電子が余ってしまいます。ここから、この半導体をNegative型半導体(n型半導体)と呼びます。そして、この場合の不純物原子をドナー原子(Donor)といいます。「電子多くて、余ってるからやるよ。」ってことです。逆にホウ素(B)を加えると、電子が足りない状態になり、ホールが生まれます。この半導体をPositive型半導体 (p型半導体)と呼びます。そして、この場合の不純物原子をアクセプター原子(Accepter)といいます。「電子足りないので、いつでもWelcome!」ということです。これらがn型半導体、p型半導体です。

 

2.5 p-n接合

もう、なんか書きながら卒論みたいだなって思えてきました。いよいよ、p型半導体とn型半導体を接合する時がきましたよ!興奮しますね。

では、接合し、何が起きるのかをバンド図で説明します!

図6

まず、接合することでフェルミ準位というものが一致することで安定し、バンド図のようにn型半導体とp型半導体の間に傾きが生じます。そして、この間にある層を空乏層といいます。ここから以下の通りになります。

  1. 光(エネルギー)を受けます。
  2. 価電子帯にある電子が励起し、励起子が生まれます。
  3. この励起子は動くことができ、空乏層に入ります。
  4. 空乏層では強い内部電場が生じており、励起子は電子とホールに別れます。この現象を解離といいます。電子は陰極へ、ホールは陽極へと、それぞれエネルギー的に安定な方に流れます。

これによって電気が流れるわけですね。太陽電池バンザイです。

 

(3) まとめ:悲しい恋の物語 (ベジタリアン向け)

電子「ねえ、10ナノメートルなんだって。」

ホール「え、何?」

電子「励起子の動ける距離、10ナノメートル。」

※1nm= 10-9m

 

桜の花の落ちるスピードは秒速5センチメートルだそうですね。[5] ちなみに実際は、もう少し遅いそうです。[6]

 

ざっと、簡単に文系にもわかってもらえるように、まとめます。

太陽電池には半導体ってのが使われてて、それには純粋なやつ(真性半導体)と、positiveなやつ(p型半導体)とnegativeなやつ(n型半導体)がいる。で、そのp型とn型の半導体を、「おりゃー!」と、くっつける。

そして、それが光を受けたら、電子とホールのいちゃいちゃカップル(励起子)が生まれる。でも、彼らは進むうちに、negativeな半導体とpositiveな半導体の間(空乏層)で、社会という巨大な見えない力(内部電場)によって引き裂かれてしまう。電子は陰極へ、ホールは陽極へ。それぞれの人生を歩むのであった。

悲しいですね。

 

ということで、第2回はこれにて終了です。

第3回は太陽電池の家族を紹介します。お楽しみに!!

 

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引用・参照リンク

[1] 産総研 太陽光発電工学研究センター太陽電池の分類 https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/groups.html

[2] 平成 22 年度 3E 電子デバイス工学 講義参考資料 http://akita-nct.jp/tanaka/kougi/2010nen/3e/3-10bandstructure.pdf#search=’%E5%B0%8E%E4%BD%93%E3%83%BB%E7%B5%B6%E7%B8%81%E4%BD%93%E3%83%BB%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93′

 

[3] 科学技術週間HP http://stw.mext.go.jp/series.html

[4] 史上最強カラー図解 プロが教える太陽電池のすべてがわかる本 (著)太和田善久

[5] 秒速5センチメートルHP http://www.cwfilms.jp/5cm/index.html

[6] モノづくりスペシャリストのための情報ポータル 桜の花の落ちるスピード「秒速5センチメートル」は正しいのか? http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1504/01/news031.html

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