オーストラリアからのトビタテ便り(了)〜南十字星みーつけた〜

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天の川。オーストラリア国立大学ストロムロ天文台にて撮影

天の川。オーストラリア国立大学ストロムロ天文台にて撮影

ホホウ! 本日の更新はオーストラリアからのトビタテ便り(了)〜南十字星みーつけた〜です。最後の最後まで天体観測について熱く語る彼女は正にスペシャリストです。

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

7のトビタテ便りも3人のトビタテ生に描いてもらっています。本日の便りは、天文学。星空、銀河、ロマンあふれる響きですがその深すぎる話を、齊田 智恵さんに聞いてみましょう。

これまでの連載記事   

本文

天体観測というとこんな感じのことを想像するかもしれません。

天体観測のイメージ(出典:Halfblue from Wikipedia [1])

天体観測のイメージ (出典:Halfblue from Wikipedia [1])

が、実際にはこんな感じです。

ATCAで観測中の私

ATCAで観測中の私

「え?コンピュータのスクリーンだらけ!」「そして肝心の望遠鏡がない!」と思われた方、そうなんです。観測ってこんな感じでした。

観測ってなんだっけ?

 一文で表すならば、星を見て「きれいだなー」というのは観望で、星の明るさや色を「測る」のが観測です。観測は理科系の他の分野の実験にあたる部分とも言えるほど必要不可欠な部分になっています。

観測をする望遠鏡

 前回述べたように天文学では様々な波長で観測することができます。光赤外望遠鏡はみなさんがイメージしている望遠鏡の大きい版になります。覗き穴の代わりにCCDカメラが取り付けてあり、望遠鏡で「観た」画像はすべてデータでコンピュータに送られます。電波望遠鏡はパラボラアンテナを巨大にした形をしているものです。パラボラアンテナが1つだけのものは単一鏡型電波望遠鏡、パラボラアンテナを2個以上同時に用いて観測するものを干渉計型望遠鏡と言います。その他の波長の望遠鏡は人工衛星に積んで宇宙空間で観測を行っています。
 先月にオーストラリアのナラブライにある干渉計型電波望遠鏡、Australia Telescope Compact Array (ATCA)での観測に同じ研究室のポスドクさんに同行して観測に関して学ぶ機会がありました。その時の出来事をベースに観測で何をするのかを紹介します。
観測で使用した干渉計型電波望遠鏡ATCA(のポスター)。このようなパラボラアンテナを6つ同時に使用して観測を行う。

観測で使用した干渉計型電波望遠鏡ATCA(のポスター)。このようなパラボラアンテナを6つ同時に使用して観測を行う。

観測をしよう

 観測を行うために必要なプロセスは以下の通りです。
解決したい疑問→プロポーザル執筆→プロポザル採択→観測→データ解析→議論&考察→論文化
観測がしたい!と思ったら
プロポーザル執筆
 プロポーザルとは「こんなサイエンスをするために観測をしたいので望遠鏡の時間をください」とお願いする文章です。まず解決したい疑問や謎があったらどんな天体をどのような波長で観測すればいいかを考えます。その上で観測天体の選出、観測時間の計算などを行い、検討を重ねます。プロポーザルにはなぜその観測がしたいのか、観測が今後の天文学にどんなインパクトを与えると考えられるか、なぜその望遠鏡を用いて観測したいのか、観測の実現性、観測の時間、観測天体などいろいろなことを書きます。プロポーザルは世界中の望遠鏡で募集されており、募集期間や採択条件もまちまちなのでチェックすることが大事です。
プロポーザル採択
 プロポーザルを提出したのちに審査があります。TAC(Time Assignment Comitee)が提出された全てのプロポーザルを読み、優先順位をつけます。優先順位が高いものから採択され、優先順位が低いものは部分採択または不採択となります。晴れて採択された場合は望遠鏡の観測のスケジュールが設定され、観測者に告知されます。プロポーザルの競争倍率は望遠鏡ごとに異なり、2倍程度の望遠鏡もあれば10倍もの倍率がある望遠鏡もあります。
いざ、観測
観測準備
 スケジュールを組みます。観測を始める時間、観測する天体の順番、各観測天体を観測する時間の長さ、観測周波数、などなどを「スケジュールファイル」というファイルに保存します。
観測
 いよいよ観測です。観測者が現地に出向いて観測するもの、観測者がリモートコントロールで観測するもの、望遠鏡のスタッフが観測してくれるものなど望遠鏡によって観測する方法は違います。今回使用したATCAは観測者が現地またはオーストラリア国立望遠鏡本部に出向いて観測するタイプでした。経験が豊富な観測者はインターネットを通じて他の場所からリモート観測できるようです。
 まず、望遠鏡の設定を行います。観測する周波数などの設定をした後に強い電波を発している(明るい)天体を観測しながらフェーズや遅延の補正をします(説明するのが難しいのですが、焦点を合わせている感じだと思ってください)。
 日や時間によって空のコンディションは変化します。その変化を補正するために明るさがわかっているキャリブレータという天体を観測します。キャリブレータの観測の頻度は観測する波長によって違います。データ解析の時に観測天体とキャリブレータを比較する作業もします。
 キャリブレータの観測をした後は観測する天体の順や時間設定などを記録しているスケジュールファイルを読み込み、実行します。スケジュールファイルを実行した後はある天体の観測が終わった後に自動的にデータファイルが生成され、自動的に次の天体の位置に望遠鏡を動かし、観測を始めてくれるので特に操作をする必要はありません。観測中にはトラブルが起こるので、スペクトルのチェックや望遠鏡周辺のコンディションをチェックします。私たちの観測中には起こりませんでしたが、もし望遠鏡周辺の風が強い場合は観測を中止しなければならないこともあります。
観測中の1日はこんな感じでした
18:00 望遠鏡セットアップ開始
18:30 観測開始・定期的にスペクトルをチェックする
20:30 ポスドクさんがご飯を食べに行く
21:30 ポスドクさんが帰ってくる。入れ替わりでご飯を食べに行く
06:00 観測ターゲットの観測を終了、次の観測者に引き渡し
07:00 就寝
14:00 起床
15:00 朝ごはん
15:30 研究棟へ。観測までに昨日の復習やメールチェック
17:30 ふらーっとコントロールルームへ移動。そして次の観測が始まる
データ解析
 観測で得たデータを解析します。ATCAのデータはオーストラリア国立望遠鏡が所有するサーバーに保存され、観測者はそこから直接ダウンロードすることができます。観測データはデータサイズがとても大きいのでサーバー上で解析してしまうことも可能です。電波天文学で使用する解析ソフトとしてはAIPS、CASA、miriadなどがありますが今回はmiriadで解析を行いました。そのほかにも図の作成やほかの計算を行うためにpythonやfortran、C、perlなどのプログラミング言語も良く使用します。解析の方法や結果は今回の観測の論文が発表されるまで書くことができませんがきれいなスペクトルを出すことができました。
結果を世に発表しよう
 解析結果から考察を進めます。観測天体や解決したい疑問によって出すべき結果の形態は変わりますが、電波強度を出すこともありますし、天体の運動を測ることもあります。これらの結果から観測した天体やその周りでどのような物理現象が起こっているのかを議論していきます。議論や考察の結果などがまとまれば、最終的に学術論文にまとめ、世の中に発信します。

最後に

 4回にわたり、天文学や宇宙について紹介をしてきました。この機会をくださった学生発トビタテ情報発信局の編集者の方々や最後まで読んで下さった読者の方々に感謝を申し上げます。宇宙は壮大です。その壮大さの魅力を少しでも垣間見てもらえたのなら、とても嬉しいです。

今週の天文リンク

 天文にまつわる名所をGoogle Mapで見ることができるサイト。世界中の電波望遠鏡やロケットのモニュメント、さらにはプラネタリウムのドームまでめずらしい建造物を空から見ることができます。
『星の子館』の天文情報・Googleマップで見る天文名所めぐり | http://www.city.himeji.lg.jp/hoshinoko/kansoku/openobs/googlemap.html

参考

[1] Wikipedia: Amateur Astronomy | https://en.wikipedia.org/wiki/Amateur_astronomy

この人に、留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ