ラオスからのトビタテ便り3〜先生でも生徒でもない視点から見る教室〜

 

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力強いGood job!!

ホホウ! 本日の更新はラオスからのトビタテ便り3〜先生でも生徒でもない視点から見る教室〜です! 九九を歌に乗せて覚えるという日本の技術を駆使した高木くんは、CDを作成するまでに!! 要チェック!!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

7月のトビタテ便りも3人のトビタテ生に描いてもらっています。本日の便りは、ラオスでe-Educationを広めている高木一樹くん! 誰もが教育を受けられる世界を目指す彼の奮闘を応援!

これまでの連載記事  

本文

※連載について

私の専攻は教育ではありません。教育学をもとにした学術的な文章を書くことはできませんが、生徒でも先生でもない位置からずっと教育現場に張り付き、実施活動を行って見てきたありのままをお伝えしていきます!

ラオスからのトビタテ便り「生徒でも先生でもない視点から見る教室」

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こんにちは!
トビタテ一期生・e-Educationラオス担当の高木一樹です。
自己紹介・留学内容・目的などはこちら
前回の連載記事はこちら

 

■目次
1.国籍も年齢も越えたモノづくり
2.小学1年生の15日間の挑戦
3.溢れ始めた笑顔と歌声
5.中間テストと先生の役目
4.ありがとう

■前回の振り返り
前回は、学生の求めていることはなにかというお話から始まり、ラオスの算数の基礎の向上や音楽や体を動かす機会をラオス初の試みである掛け算九九で少しでも補おうというお話をしました。今回はその九九の歌作成の話から始まり、実施のお話メインで進めていきます。

■国籍も年齢も越えたモノづくり

さあいよいよ始まりました。国籍は関係ありません。年齢も関係ありません。あらゆる枠組みを越えて、みんなが「ラオス初の掛け算九九の歌を作ろう」という共通のミッションに向かって進み始めました。

私は非常にワクワクしました。なぜなら私が夢を見てきたことが実現したからです。
人間という同じカテゴリーの生き物が、さらに生まれた地域環境によって国・国籍というものへ分類されてしまうことに幼いころから疑問を感じていました。いつかそのようなしがらみのない世界を生きたいと夢見たこともありました。

しかし、ひとつのミッションに向かっていく私たちはもはや国・国籍だけでなく年齢の壁を越えてしまっています。言語が違おうが、文化が違おうが、全員同じゴールを描いた時は、ゴールに向かって熱意を持ちながら一丸となって走っていけるということに感動しました。

1.先生が歌詞の作成とダンスの振り付けを担当。

振り付けと歌詞の話し合い

振り付けと歌詞の話し合い

2.生徒が歌を担当。

生徒が歌の練習を行っている

生徒が歌の練習を行っている

3.ヤマハの音楽の先生が作曲を担当

右の方がラオス人のYAMAHAスタッフ

右の方がラオス人のYAMAHAスタッフ

4.録音した歌と出来上がった曲を私が混ぜ合わせる

麺とスープを混ぜる「ミックス」という匠のなせる技

麺とスープを混ぜる「ミックス」という匠のなせる技

5.最後にITに強いお坊さんがCDデザインと生産を担当

掛け算九九の歌のCD完成!

掛け算九九の歌のCD完成!

できあがり!・・・と、思いきやこれだけで終わりません。

「この歌を使って小学1年生が短期間でどれくらい成果を出せるのか試してみよう」この一言で、また新たなゴールが生まれました。

ラオスの風景~~

ラオスの風景

私個人の思い付きで、歩いて2分でついてしまう程の近い距離に位置している公立小学校もこの取り組みに巻き込みたいと思いました。なぜなら、その公立小学校の周りには多くの私立の学校とインターナショナルスクールが建ち並んでいました。

私立やインターナショナルスクールに通う生徒たちはカラフルな制服を身にまとい、校舎も立派で、校内からは楽しそうな音楽や声も聞こえてきます。さらに人数が圧倒的にその公立小学校よりも多いのです。午前中の時間帯に障害を持つ生徒も受け入れている公立小学校ですが、午後からは別の施設へ移ってしまうため、さらに人数が減ってしまいます。

だからと言って、それがちょっとかわいそうだなと思うのは違うかもしれません。なぜなら私は小学生の本音を知らないですし、実際幸せで楽しく満足した日々を送っているかもしれません。

しかし、もし仮に生徒が「羨ましい」という感情を少しでも私立やインターナショナルスクールへ抱いていたらと、仮説上ではありますが居ても立ってもいられなくなりました。

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これが小学生の頃の私の「居ても立っても居られない表情」

ただ、どちらにせよ子どもは誰しも楽しさ・おもしろさを求めて探求し続けていることは確実です。さらに言うと子どもだけでなく人間だれしもが常に楽しさ・おもしろさを求めているはずです。

その例として、この世に生まれて進化を遂げてきた多くの人の目を惹きつけるようなプロダクトやコンテンツの裏には、誰かの「楽しさ・おもしろさといったワクワクすることへの追及」があったはずです。私たちの九九の歌の作成も同じ追求から始まっています。

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初めてのスタジオにワクワクしながら歌の練習

子どもは繊細かつ敏感な感覚を持ち、楽しさ・おもしろさへ触れている瞬間の幸福度と満足度は非常に大きいはずです。
その楽しさ・おもしろさと学習が重なった時、遊びに近い感覚を保ちながら学びとして吸収していけるのではないかと思います。

それをこの九九の歌で実現できるのではないかという根拠のない自信と可能性を感じていました。

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顔を近づかないと室内が見えないガラス。こどもは自分の興味関心にまっすぐ。

そのふたつの思いから、この絶好の機会をファさんの学校の生徒たちと一緒に、近くの公立小学校の生徒にも経験してほしいと思いました。徒歩2分しか離れていないのに、環境や距離、さらにいうと学校という枠組みで経験できないのはもったいないと思ったのです。

なにより、「新しい友だち」と同じゴールに向かって熱意を持って走る楽しさというものも感じてもらいたいという思いもありました。

ファさんはいいます。「その学校はかつて私が教鞭を持っていた思い入れある学校だよ。今も昔の同僚が働いている。まずは教育地区局の所長さんに早速お話に行って、承認を得て来よう。」

今回も非常にスピーディでした。私がラオス南部で見逃しながら活動しようとしていた許可/承認を得るということもしっかりカバーしてくれました。さて、無事に教育地区所長さんから、その公立小学校と一緒に九九の歌を利用した活動の許可を得ました。

ここで大きな問題に気づいてしまったのです。なんと公立小学校は残り20日後には夏休みへ突入し、さらにそのうちの最後の週はテスト期間で、この活動に使える期日がたったの15日間しかないことがわかりました。

小学一年生が、たったの15日間で九九をマスターできるのか・・・!?」
心配になりましたが、ファさんとともにとりあえずやってみようということで決意を固めました。

■小学1年生の15日間の挑戦

早速、歌を活用する前に初めのテストを実施しました。

公立小学校1年生

公立小学校の1年生たち。昼から違う学校へ移動する学生もいる。後ろにいる先生も午後から一緒に移動

制限時間は10分に設定しましたが、ひとりも解き終わることはなかったため、1年生担当の先生が時間の延長を希望し、5分追加して15分間実施しました。

結果的に15分でも解き終わる生徒は2人ほどしか出ませんでした。それもそのはずまだ小学1年生です。

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一生懸命にテストに取りくんでいる

テストの平均点の結果は・・・

【ファさんの学校】
Aクラス45点
Bクラス53点。

【公立小学校】
57点。

テストの様子から見て、既に習ってきた足し算を利用しながらも諦めずに計算をして回答していました。その諦めない姿勢を見て、この生徒たちならやってくれるのではないかとも思いました。

その後すぐにファさんの学校へ公立の小学生たちも移動し、初の掛け算九九の歌の披露となりました。

掛け算九九初披露。後ろの白の制服は公立

掛け算九九初披露。後ろの白の制服の生徒は公立の小学生

生徒たちは、初めて見る掛け算九九を集中してみていました。これから15日間満点目指して頑張っていきましょうというファさんの熱いメッセージと合図で、いよいよ15日間の挑戦が開始となりました!

集中している

集中している

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新しい友だちに興味津々

■溢れ始めた笑顔と歌声

開始から2日が経ちました。さすが若い。覚えが早い。生徒たちが徐々に歌とダンスを覚えていきます。

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お昼休み

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朝の時間

その後3日目から、3の段と7の段。6の段と9の段と10の段。といったような不規則に段を組み合わせた小テストを実施し始めました。小テストということもあって、生徒は満点を取りやすく、毎日真剣に取り組みます。

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先生が説明のために書いた板書

私は自分の小学生の頃を思い出して、満点を取った生徒には、はなまるをつけて先生になった気分で答案用紙を確認していました。
ちなみにテスト時にゲーム感覚で解答できるように時間も計っています。

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なつかしの「はなまる」右上には解答時間

先生から「この子はあまり勉強ができない」と、初め私がこの学校へ来たばかりの頃に言われていた生徒も満点を取るなど、教室内の笑顔も徐々に溢れ始めていきました。

その生徒たちの様子を先生たちも本当に嬉しそうに話していました。先生同士も掛け算九九の話をする頻度も増えていき、先生チームの士気も上がっていきました。

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他の学年の先生にも結果を共有

掛け算九九の歌を流している時の生徒たちの熱も喜びとともにどんどん増していきます。

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上空から撮影(仮)

■中間テストと先生の役目

さて、8日目に中間テストを実施してどれほどの成果が上がったのか見てみようということでテストを実施しました。

中間テストの平均点は・・・。

【ファさんの学校】
Aクラス80点
Bクラス77点

【公立小学校】
67点

着実に向上しています。既に満点を取得する生徒も増えてきています。

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九九の歌の時に一番大きな声で歌っていた生徒

しかし、ここで新たな課題が見えてきました。この時点で満点に近い生徒、着実に点数を上げている生徒がほとんどでしたが、受動的な学習姿勢の生徒の点数は以前とあまり変わらなかったのです。
特に公立小学校では能動的な生徒と受動的な生徒との間で顕著に点数にその差が現れていました。

先生たちは生徒たちの成長を感じて既に大きな喜びを感じていたという経験が引き金となり、行動が早いです。伸び悩む生徒もどうにか点数を伸ばせないかということで話し合いました。

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右の二人が1年生担当の先生

「子どもの頃、がんばる動機としてどんなことがあったか?」
この質問が決め手でした。

・褒められるとさらに夢中で頑張った
・大人に認められたいという気持ち
・できた自分を発見してもらえた時
・こわい先生に気にかけてらえた時

先生たちのたくさんの体験談が出てきました。

双子兄弟のひとり

がんばっている様子

私自身もテストで満点を取ると親に褒めてもらいたいという一心でよくテストを見せにいきました。

何気なく書いた標語が先生に評価してもらえたり、賞を貰ったりすると、途端に文才があるような気分になって国語の授業には命を懸ける勢いで取り組んでいたような記憶もあります。(笑)

ということで、先生たちは満点を取った生徒がいれば、黒板の前に並ばせてひとりひとり名前を読み上げみんなで拍手を送ったり、休み時間に掛け算九九の歌を歌ったり踊ったりする生徒がいれば声をかけ褒めることを意識して開始し始めました。

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褒める

するとどうでしょうか・・・。
熱がどんどん増していきます。

受動的に取り組んでいた生徒も周りの熱にどんどん押されて能動的に変わっていきます。
休み時間にはダンスにアレンジを加える女の子たちも現れ始めました。

この様子を生徒でも先生でもない位置から見ていた私は、先生の本当の役割は、教授スキル云々の前に、生徒のモチベーションをいかにしてあげるかというところが最も大切な役割なのではないかということに気づき始めました。

伸び悩む生徒をいかにして伸ばしていけるか。それはこういった先生の授業外やスキル外での生徒に対する熱心なケアが鍵だと思いました。

さてそんな熱を増す毎日も終盤へ・・・。

■ありがとう

いよいよ15日目、最終試験です。

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Aクラス

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Bクラス

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公立小学校

最終テストの平均点は・・・。

【ファさんの学校】
Aクラス94.4点
Bクラス94.8点

【公立小学校】
80.8点

中間テストとの前回比を見てみると、全てのクラスが平均14点程さらに成果を上げました。

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順調に成果を上げていった。

15日間という短い期間であるにもかかわらず、そして1年生であるにもかかわらず、多くの満点取得者が現れました。

100点取ったぞ!!

100点取ったぞ!!

非常に嬉しかったのと驚きの気持ちでいっぱいです。

ファさんからのGood job!!のサイン

ファさんからのGood job!!のサイン

1年生のBクラスの担任の先生から、「今までこんな短期間で生徒たちが成果を上げたのは初めて。一緒に頑張ってくれてありがとう。」という言葉に気持ちが非常に熱くなりました。

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Aクラスのベテランの先生の大きな笑顔

気づけば生徒たちも私のことを「アーイ キ」「キ サン」「カズキサン」と覚えてくれていて、他にもあだ名で私の大好きな「アーイ カオピヤック」と呼び始める生徒まででてきました。

私もいつの間にか15日間で熱意を持って活動しているうちに生徒たちの名前を覚えていました。

以前は・・・

Before

Before

今は・・・

After

After

ちなみに「アーイ」とは日本語でいうところのお兄さんみたいな意味です。さらに「カオピヤック」とはうどんみたいな麺の食べ物です。

「うどんお兄さん」・・・わるくないですね。

本当にありがとうという気持ちは私も一緒でした。

私はまずファさんと出会わなければこの九九の歌にも、この愛らしい生徒たちにも、一緒に頑張ってくれてありがとうと言ってくれた先生たちにも会うことはできませんでした。

そしてファさんと会うきっかけとなった、てっちゃんねっと・トレーニングセンターのてっちゃんには感謝してもしきれません。

※その後の効果のまとめ

これらの活動の結果から、掛け算九九の歌を使用した学習をするメリットに、短期間で効果的に覚えられるという点を証明することができました。

さらに時間が経っても休み時間に歌を流すのみで、平均点を維持できるかどうか確認するために、生徒や1年生担当教員へテストの予告をせず、15日間プロジェクトの最終日5月14日から6月15日まで、ファさんの学校で先生による意識的な管理やテストの実施を中止し、最終日である6月15日にテストを実施した結果、Aクラスが96.9点を獲得。Bクラスが98.3点を獲得し、点数の維持・向上を達成できました。

このことから、歌・音楽・ダンスを暗記に用いることで、持続して記憶を保持することが可能であるということも証明ができたかと思います。さらに、そこには能動的思考が働いていたからこそ、先生の管理がなくなったとしても生徒自らの力で平均点の向上が起こったといえるのではないだうかと考えています。

15日間九九の歌で学習した1年生の平均点と比較するため、掛け算九九の歌を使った学習をまだ行ったことのない2年生へ掛け算のテストを6月4日にファさんの学校で行いました。

結果は2年生2クラスの合計平均で93.6点でした。15日間九九の歌で学習したファさんの学校の1年生2クラスの合計平均は94.6点であるため、1点2年生が下回った結果となりました。しかし、その後歌を利用し始め、9日後は99.2点という成果を出すことができました。

掛け算九九は小学生が最初に向かえる大きな壁です。1から100までの数字の組み合わせを覚えなければなりません。
その壁をもし短期間で突破することができれば、学習における特に算数に対しての意欲・自身の向上が期待できるかと思います。さらにその後能動的な学習を生むことができるのではないかという仮説を立てています。すぐにその仮説が正しいかどうか、結果が出るわけではないですが、15日間一緒に頑張った生徒たちの今後が非常に楽しみです!

改めておめでとう!

改めておめでとう!

プロジェクトの様子を1分でまとめた動画はこちら

ラオス語版はこちら

さて、次週は新たなる一歩ということで話がさらにそしてどんどん動いていきます。

教育地区のミーティングで掛け算九九の歌の活動を発表する場を所長さんからいただいた

教育地区のミーティングでファ先生と掛け算九九の歌の活動を発表する場を所長さんからいただいた

来週は最後の連載記事です。そして帰国まであと約1か月半となりました。

ではでは、お楽しみに!

この人に、留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ

ABOUTこの記事をかいた人

Kazuki Takagi

現地の小学校で庭師として花や木に水をあげる傍ら、その学校の生徒と先生と先生の友だちと一緒にラオス史上初のかけ算九九のうたをつくりました。1他にも映像授業を作成したりもしていました。わたしに、留学相談したい方は、留学codeからどうぞ。http://www.ryugaku-code.com/mentors/65