ラオスからのトビタテ便り2〜先生でも生徒でもない視点から見る教室〜

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ミーティングの様子

ホホウ! 本日の更新はラオスからのトビタテ便り2〜先生でも生徒でもない視点から見る教室〜です。なんと九九の歌を作るという企画を発案し挑戦する高木さん! ラオスには無かった歌と教育の融合に取り組みます!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

7月のトビタテ便りも3人のトビタテ生に描いてもらっています。本日の便りは、ラオスでe-Educationを広めている高木一樹くん! 誰もが教育を受けられる世界を目指す彼の奮闘を応援!

これまでの連載記事 

本文

 

※連載について
私の専攻は教育ではありません。教育学をもとにした学術的な文章を書くことはできませんが、生徒でも先生でもない位置からずっと教育現場に張り付き、実施活動を行って見てきたありのままをお伝えしていきます!

ラオスからのトビタテ便り「生徒でも先生でもない視点から見る教室」

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こんにちは!
トビタテ一期生・e-Educationラオス担当の高木一樹です。
自己紹介・留学内容・目的などはこちら
前回の連載記事はこちら

 

■目次
1.学生の求めていることってなんだろう
2.ラオス「初」に挑戦
3.「×」の持つ大きな可能性とチャンス
4.連鎖し始める繋がりの輪

■前回の振り返り

ようやく動き始めると思っていた映像授業の作成が、自分の能力不足・対話不足が原因となって、大きな失敗を経験するというところからスタートしました。その後、受け入れ先機関「てっちゃんねっと・トレーニングセンター」のてっちゃんへ相談に向かい、桜植えに参加したことが一つのきっかけとなり、新しく小学校で活動することとなったところまでが前回の記事でした。

失敗から大きな学びを得た後、まだまだニーズ探しは続きます。

1.学生の求めていることってなんだろう

この疑問がはっきりと解消されないままに、私はファさんの小学校で活動を再開することになりました。以前の記事で「対話」をすることが重要だと言いましたが、先生に協力してもらいながら小学生に質問してみるも、なかなか深い会話を生むことができませんでした。

相手は小学生。大人からの問いはきっと緊張してしまいますし、私も小学生の頃、それも低学年の頃は普段ものごとを「好き」か「嫌い」か、「はい」か「いいえ」でしか基本的に考えていなかったので、生徒に考えさせる「why」系統の質問は、いきなりは難しかったなと反省しました。

学生がそもそも近寄って来ない図。(泣)

学生がそもそも近寄って来ない図。(泣)

授業参観の日や、外部の方が教室に見学に来ている日は、少し緊張しながらも身を引き締めて普段より真面目に授業を受けていた自分を思い出します。見学に来た人は普段の様子を見に来ているのに、生徒はいつもと違う状況でいつもと同じ様子を出すのは難しいことだと思います。普段と変わらぬ調子の話を生徒から得るには、もっともっと近い距離に行かなければいけないと思いました。

とりあえず、声が聞けるまで距離を縮めようと努力する以外に何もしないのはもったいなかったので、私は世界銀行と教育省で実施していたテストの結果をもとに、算数の基礎にフォーカスして映像教材の制作をファさんと一緒に試みていました。

映像授業の撮影に使っていた部屋

映像授業の撮影に使っていた部屋

しかし、ある時日本に留学しているラオスの方にお会いする機会があり「本当にそれはラオスの小学生が求めていること?小学生は本当に勉強したがっているの?」という疑問を投げかけられたときに、自信を持って答えることができませんでした。

考えている風

考えている風@ラオス南部

なぜなら小学生全員の本当の胸のうちを聞いたわけでもないということと、自分が小学生だった頃は、毎日ただ楽しいこと・おもしろいことを求めて生きているだけでした。そう、ここで私は昔の自分を思い返すことでひとつの発見をしました。

小学生の頃の私

小学生の頃の私

世界中の小学生がおそらく共通して「楽しいこと・おもしろいこと」を求めているということに。
私はこれまでにおもしろいこと・楽しいことに無関心な小学生を見たことがありません。そのおもしろいこと・楽しいことに工夫して学習を重ねることができれば、さらに国がデータとしてあげている算数の学力の向上を狙えるものが完成すれば、一石二鳥で最高かもしれない。

楽しい学習・おもしろい学習で自分の過去の体験何があったか思い返しました。
体育・音楽・図画工作・九九の歌・かるた大会・理科の実験・・・等々。

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空を見上げながら考える図(自分視点)

以前の失敗から学んだ「対話」に挑戦しようと、早速ファさんにも相談をしてみました。

2.ラオス「初」に挑戦

「それだ!そのラオスバージョンを作ろう!」

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決断

というファさんの声が響きました。やはり決断力やスピード感がすごいです。
なんと、ラオスにはまだ2の段から10の段までの九九の歌・音楽は存在していないということでした。

アメリカ・イギリス・隣国のタイ・韓国・そして日本。他にもあるかもしれませんが当時さっと検索して出てきたのでもこれだけの多くの国で歌を活用して覚えている学生がいることがわかりました。私自身も小学生の頃に歌を活用して覚えたため、その効力を経験から知っていました。

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ぱっとyoutubeで検索しただけでも100万回再生越えの掛け算九九の歌が2つも

 

さらにラオスの公立学校では音楽を学習する機会があまりないそうです。もちろん歌う機会もそれほど多くないのだとか。
「芸術」の時間として絵画や伝統ダンス、歌などと一括りにされており、学習時間は週に1時間ほどだそうです。
地方に行くと「芸術」や「体育」を教えられる先生が不足しているため、そもそも授業がない学校もあるという話を教育省の方から伺いしました。

ラオス初の試みとなるであろう掛け算九九の歌。ひょっとすると・・・
公立の学校の生徒も、地方の学校の生徒も、学校で友達と一緒に歌を歌うという機会を増やせるのではないか!?
さらに、九九の暗記も友達と歌を歌うことによって、苦なく突破できる学生が増えるのではないか!?

非常にワクワクしました。

ちなみに、この時はちょうどタイミングよく自分の友人がラオスに来ていたということもあり、みんなで一緒に大盛り上がりです。
そのうち一人はミャンマーから来た大親友のトビタテ一期生、山口諒真くんです。もうふたりはe-Education国内メンバーの越村麻里さんと友達の平川さんです。皆からのひと押しが士気を一気に高めました。

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盛り上がる図

翌日は、他の先生とこのアイデアをシェアして具体的にしていくために、ファさんと一緒にミーティングでの提案と話し合いへ向かうことに・・・。
結果的に、全ての先生がこのアイデアに賛同し、曲調などで参考となりそうなものをそれぞれが翌日までに見つけ出してくれることになりました。

結果的に先生たちが用意してきてくれたアイデアは話し合いによって以下の2つが採用されました。

  • ラオスの伝統音楽のリズムを曲に組み込む
  • ダンスを取り入れて体も使って覚える

他にもタイの九九の歌を見つけてきてもらい共有していただくなど、熱の溢れる空間を見ました。

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シチュエーションは違うが、熱の溢れる場をの参考図

さて、ここで私たちは誰が曲を作ればいいのかという最も重大な問題に気づきました。
続きは「4.連鎖し始める繋がりの輪」でお話します!

3.「×」の持つ大きな可能性とチャンス

少し話がそれてしまいますが、私自身、掛け算九九の学習に大きなポテンシャルを感じているのでこの場を借りてお話させてください!

今の感覚で掛け算九九を振り返ると覚えていて当たり前という認識が強いかもしれません。しかし、初めて九九表を見た時・覚えなければならないと知った時、どう思ったでしょうか。私自身どう思っていたかはっきりとは覚えていませんが、元々算数が周りの友だちよりもできなかったため、少しうんざりしていたのではないかなと思います。

メコン川

メコン川

日本の場合「1から9の段まで合計81の数の組み合わせを暗記しなければならない」ということになりますが、これは小学生にとって初めて立ち向かわなければならない大きな壁なのではないかと思います。

算数の苦手な私でしたが、通信教育の付録教材としてついてきた九九の歌で九九をいち早く完璧に覚えました。結果、クラスでもかなり早くすべての段を暗記し、「九九覚えたよスタンプカード」をいち早くはなまるスタンプで埋めました。これは当時の私にとっては大きな達成感と自信に繋がりました。算数が好きではなかった私はこの小さな成功体験を得たことによりその後は意欲的に授業を取り組むようになりました。「また先生・親に褒められたい」そんな思いから勉強していたかと思います。

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テストで満点を取った時皆さんはどうしていましたか?

さて、この「掛け算九九のポテンシャルとは」というお話に戻りますが、九九は先生にとっても数字でわかりやすく成長を感じられるので、生徒の成長を褒めやすいという点で小さな成功体験と大きな喜びを生みだすチャンスが眠っているように感じます。さらに小学校低学年で初めに向かえるこの大きな壁を、短期間で突破することのよって、その後の生徒の達成感・自信から意欲的・能動的な学習に少しでも繋がる可能性がでてくるのではないでしょうか。

4.連鎖し始める繋がりの輪

私の考える九九の可能性を知っていただいたところで、またプロジェクトのお話に戻ります。さて、作曲は誰がやるのかという壁に直面しておりましたが、ここは行動あるのみということで、候補を絞って交渉に向かいました。

候補は以下の通りでした。

  1. ラオス歌手
  2. 違う学校の先生の作曲ができる息子さん
  3. まさかの私が頑張る

まずは、プロの歌手のオラさん下へ訪れました。早速お願いを試みましたがアイデアには賛同していただけたものの、時間がないということと、若者に人気のオラさんのイメージと九九の歌がおそらく合わないというところで、交渉失敗。

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スタジオも見せてもらいました

さて、次に違う地区の学校にいるファさんの知り合いの先生の息子さんが作曲できるということで、交渉に向かってみました。ここではアイデアにも協力にも賛同していただけたのですが、すぐに作曲を行うのは難しいということがわかりました。

次に私が頑張るということでしたが、曲と歌を程よく混ぜ合わせるという作業は多少できるのですが、まともに作曲経験がなかったためにここはあまり自分の気が進みませんでした。

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誰が曲を作るのか

さて困ったそんな時に、ファさんの学校は私立の学校ということもあって、ヤマハのスタッフのラオス人の方が毎週何度か音楽を生徒に教えに来ているということにファさんが気づきました。しかしその方の専門はリコーダーだそうです。

「もしかしたら彼は作曲もできるかもしれない。」そう考えたファさんが早速アクションを起こしてくれました。まず掛け算九九の歌についての説明を始めてくれました。

「やってみます。」そうヤマハのスタッフの方が答えてくれました。なんと作曲もできるということでした。普段はほとんどやらないのだそうですが、今回は特別「生徒のためなら」と、作曲を協力してくれることになりました。

YAMAHAスタッフの方と打ち合わせ。(左)ヤマハのラオスの方

YAMAHAスタッフの方と打ち合わせ。(左)ヤマハのラオスの方

以前、プロの歌手オラさんにお願いしに行ったときに、歌は歌手の方にお願いしてみようというプランでしたが、結局協力を得ることができなかったため代わりに誰が歌うのかということになりました。先生たちとの話し合いであがったアイデアが、生徒がレコーディングに挑戦するということでした。

私はまた非常にワクワクしました。

先生がダンスの振り付けを担当し、生徒が歌を担当し、ヤマハの音楽の先生が曲を作る。そして私は録り終えた歌と出来上がった曲を混ぜ合わせる作業を行う。
まさに自分の目指していた「現地人の現地人による現地人のための○○」の真っただ中でした・・・。

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カオピヤックを食べる(うどんのようならーめんのようなラオスの食べ物)

今回はどのような経緯で掛け算九九の歌が作られていったのかをお話しました。
次回は実際に自分たちの作った歌を用いてプロジェクトを実施していくお話です。

この人に、留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ