リンツからのトビタテ便り3 −ドナウ川の畔で宇宙を考える

ホホウ! 本日の更新はリンツからのトビタテ便り3 −ドナウ川の畔で宇宙を考えるです。宇宙芸術とは、その実ローカルな世界により構成されており、それをとても尊重している。彼女の生活からそれを感じます。要チェック!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

6月のトビタテ便りも3人のトビタテ生に描いてもらっています。書いて頂いたのは田中ゆりさん。本日の便りは宇宙芸術。最早その言葉からはどんなものか想像もつきません。その好奇心を満たすためには、この記事を読むしかなさそうです。

これまでの連載記事  

本文

第三章:リンツ滞在記

第一章 から第二章では、宇宙芸術について述べてきた。転じて本章では、私が現在リンツでどのような生活を送っているか、我が身を振り返って徒然と綴ることにしたい。なお、留学の経緯や概要については日本代表選手紹介ページを参照していただけると幸いである。

リンツに着いて早2ヶ月、もはやすっかり現地民になった心地である。というのも、いつしか不思議と空気と一緒になったような、馴染みのある心地がする。鳥の声に目覚め、街を歩き、ドナウ川を渡ってラボに向かう。アジア人が珍しいことも一因かもしれないが、行き交う人々も手を振ってくれたり、挨拶をしてくれる。街の方々の人柄が温和で柔らかいことも、リンツの特徴のひとつだろう。戦争の名残を感じる部分も多々ある歴史のある街だが、現在は平和だ。また、同じオーストリア内でもウィーン、ザルツブルグ、グラーツ、それぞれ特色があり、それらの差異もまた興味深い。
そして、地域の本質に触れるには、街の空間を身体で経験するだけでなく、住民との交流を欠くことはできない。土地の人々の家庭で語り合い、食をともにする。これは直島での島民生活で深く学んだことでもあるが、人と人との距離は、食や対話を通じてより密接になっていくものだ。

さて、本業について。現在Ars Electronica(アルスエレクトロニカ)では、9月に開催されるフェスティバルに向けて鋭意準備中である。自分が関わってきた瀬戸内国際芸術祭でも感じたことだが、ひとつの芸術祭を開催するには果てしない時間と労力を要する。アルスでは初回から2015年で36年目を迎えるが、こうして継続的に施設を保ち、研究開発や芸術祭を循環的に発展させている事例は世界でも数少ない。運命的ながら、今年はチリのESO(European Southern Observatory)と連携してArtist in Residence(滞在制作)が開始され、宇宙と芸術、科学技術の関わりも重要な段階を迎えている。
なお、第二章にある通り、自分の専門はキュレーション、メディエーションなどと呼ばれるように、協働して個をつなぎ全体をつくりあげていく技である。世界から人とものを集めていくこの現場で、触発と躍動に動機づけられ、さらなるダイナミズムが生まれていく。私はいまこの場所で、関係性が紡ぎあげられる世界の現場で学ぶ、貴重な時間を過ごしているのだろう。
多様な人々によってつくりあげていくひとつの祭り、それはひとつの作品のようにも思われる。作品は新たに生み出される命であり、おそらく私たちの子どものようなものである。

また、常設のミュージアムとして併設されるArs Electronica Centerでは、ちょうど先週Lecture Series Future Lifeという講演群の一環で発表の機会をいただいた。“Cosmic Revolution –Introduction to Cosmic Art”、和訳すると「宇宙的転回-宇宙芸術入門」と題した、一般の来訪者へ向けた内容である。地域の方々に喜んでいただけたことが何よりも嬉しい。
さらに、それに伴って公式ブログにも掲載していただいた。お時間の許す方はご覧いただけると嬉しい。

一方、第二章で述べたように、現在リンツを拠点として宇宙芸術の出版プロジェクトを進めている。そのため、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、イスラエルと順次出張が続くのだが、卓越したアクセス性を有するオーストリアの立地条件に感激するばかりである。会うべき人、会いたい人に会うために世界中のどこまでも。このようなことができる自分の任務は、天職に出逢えたと思わざるを得ないほどの、感動にあふれている。
そして、宇宙芸術は未来に向かう芸術のあり方である。未来をつくりあげていくArs Electronica, Futurelabで自分がいま滞在研究していることも、何かの必然であるのかもしれない。

ドナウ川の畔で世界とつながり、宇宙を考える。瀬戸内海もドナウ川も同じ宇宙の要素から湧き出でた。私たち生命も、たとえ何処の国に生まれても、同じ宇宙のかけらなのだろう。

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