フィンランドからのトビタテ便り 了〜もうひとつの最先端〜

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ホホウ! 本日の更新はフィンランドからのトビタテ便り了〜もうひとつの最先端〜です。一ヶ月間のコラムもとうとう終わりです。開発学とデザインの地平の果てを要チェックです!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

5月のトビタテ便りは3人のトビタテ生に書いてもらっています。本日の便りは、フィンランドで開発と工学の紡ぐ新たな地米を目指している田岡祐樹さんです。

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本文

ここまで、発展途上国に向けて作られたサービス・モノが人々の生活を変える様子を、モノと届ける方法から紹介してきました。ただ、どこか遠い場所の話のように感じられているかもしれません。「もうひとつの最先端」は発展途上国だけにとどまらないことを最後に紹介したいと思いますが、その前に、「発展途上国」という言葉について考えたいと思います。

1 世界のこと

1.1.発展途上国??

「発展途上国」という言葉はいつから使われているかご存じですか?Wikipediaによると、1970年以前に使われていた「後進国」という言葉に替えて、1980年頃に使われ始めた言葉のようです。その頃の世界は2つに分かれていました。尚、OECDが先進国の集まりです。また、地球の「南」に発展途上国、「北」に先進国が位置していることから、先進国と発展途上国の格差を南北問題と説明することもありました。

※Hans RoslingのTED Talkを中心に説明します。読むよりもTED見られる方がよくわかると思います。なので、本当に簡単に触れたいと思います
1970

では今はどうなっているのでしょうか?まだ2つの世界があるのでしょうか?2015年の予想図

2015

データは2005年のものなので2015年を表している図は予想になります。それぞれの地域において、大多数を占める人々の支出額は違いますし、地域の中でも大きな差がありますが、2つ合った山がひとつになり、南と北という差がなくなってきています。これからの世界で、発展途上国と先進国という2つの世界にわけて考えることは、意味が無いのかもしれません。

1.2.エネルギーから世界を分ける

次に、「発展途上国」「先進国」という分け方ではなく、エネルギー消費量と環境への影響を基準にしてみましょう。(※Hans RoslingのTED Talkを中心に説明します。読むよりもTED見られる方がよくわかると思います。なので、本当に簡単に触れたいと思います。)

まず、世界の人口を収入に応じて4つのセグメントに分けてみます。左から、焚き火で料理をする人々、電気が使える人々、洗濯機が使える人々、電化製品に埋もれている人々、と言った感じにわけることができます。それぞれの境界は、左から一日の消費支出で2USD、40USD、80USDとなります。一人の人間は10億人、四角い箱は化石エネルギーの消費を表しています。

図1は2010年の様子です。なるほどと。予想に難くはありませんが、「電化製品に埋もれている人々」が多くのエネルギーを消費しています。また、第二回の連載の中で触れた、焚き火で料理する人々はほとんどエネルギーを消費していません。

2010

次に2050年を考えます。衛生環境の改善によって「焚き火で料理をする人々」の人口は倍になります。また、経済成長は続くでしょうから、全体的に、1つ右のセクションに移動しています。

2050

エネルギー消費を減らす必要がありそうです。HansRoslingはTED TALKの中で、「電化製品に埋もれている人々」が習慣を変えエネルギー消費量を減らすこと及び、再生可能エネルギーのさらなる導入が必要だと結論づけています。今までは、ライトがない。衣料品がないなど、発展途上国における「不足」を問題として捉えてきました。しかし、先進国においては、多すぎることが問題のようですね。

 

エネルギーだけに限って考察しましたが、現在の経済活動は、エネルギー以外の資源も必要とします。例えば、材料となる物質の多くは再利用されずゴミとして捨てられていきます。そもそも、more is betterを原則として、大量生産大量消費が当然のこととして捉えられています。本当にそれが唯一無二の考え方なのでしょうか。

2.新しい価値観

2.1. do more with less. Less is more

フィンランドに留学してからというもの、よく聞くようになった言葉があります。”LESS”という単語です。do more with less. Less is moreといったように使われます。前者はより多くのことをより少ないことで。後者は少ないほうがより良い。と言った意味でしょうか。

実は、この発想は先述のFrugal Innovationの中の一つの要素になっています。

2.2. Frugal Innovation 簡素なイノベーション

Frugal Innovation という言葉は、Naviらにより定義されていますが、JUGAADというヒンドゥー語の単語が最初に提唱されていました。

JUGARD: Innovative fix: an improvised solution from ingenuity and cleverness; resourceful.

例として提示されていたのは、電気を全く使わない冷蔵庫です。粘度で作られたこの「冷蔵庫」は、野菜を数日間保存することを可能にしています。冷凍食品を使わない地域では十分なのかもしれません。

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考え方はFrugal Innovationに引き継がれます。少ない資源を使い実現された機能をリソースの少ない人に届けるためのイノベーションというところです。

Frugal Innovation: As a process frugal innovation discovers new business models, reconfigures value chains, and redesigns products to serve users who face extreme affordability constraints, in a scalable and sustainable manner. It involves either overcoming or tapping institutional voids and resource constraints to create more inclusive markets (Bhatti, 2011).

Frugalという単語は簡素と訳されますが、簡素であることは安価であることと同じではあありません。結局のところ、「何がほんとうに必要なのか」を考え、それ以外をそぎ落とすことなのかもしれませんし、Design Thinkingといわれる手法とも親和性が高いように思います。

2.3. リバースイノベーション

先述のFrugal Innovationの例としては、第二回の連載の中で紹介したGEの超音波診断装置です。元々は、医療インフラが整っておらず、高価な機械を購入できない発展途上国向けに作られた製品です。実は、発展途上国だけに関わらず、先進国の中でも、従来は超音波装置が利用されていなかった場所、救命救急室、手術室などで利用されています。また、東日本大震災の時は、避難所で利用されていたようです。

このように、元々、発展途上国向けに作られたものが、先進国に「輸入」されることを別の言葉を用いて、リバースイノベーションといいます。リバースイノベーションは、発展途上国におけるcost innovation, good-enough, frugal innovationsの3種類のイノベーションが先進国に還流しているとされているので、Frugal Innovationでありリバースイノベーションであるわけです。(ややこしいっすね)

Cost Innovation: Same Functionality at a Lower Cost: Cost innovations are solutions that offer similar functionalities to Western products at lower costs for resource-constrained customers.
Good-Enough Innovations: Tailored Functionality at a Lower Cost: Good-enough innovations are solutions that include functionalities and features designed to meet a range of resource constraints beyond capital constraints
Frugal Innovation: New Functionality at a Lower Cost: The term “frugal innovation” has been used to denote innovations specifically developed for resource-constrained customers in emerging markets
2.3. デジタル工作機械とものつくり

つくるのは企業であって、私には関係ない。と思われたかもしれません。本当でしょうか?3Dプリンターという言葉が流行っていませんか?

「なんでもボタンひとつで作れてしまう」機械ですね。まあ、実際はそんなことはないのですが。3Dプリンターはデジタル工作機械の一つの例です。他にもいろいろな機械があります。これらの機械は、一度設計図を描くと、どこでも同じものを作ることが出来ます。(※機械によって精度と素材が違いますし、既存の生産方法を置き換えるものでもないと思います。)

それぞれの機械は所有するには高価なものもありますが、利用することはFabLabなどの普及によって可能になってきています。また、技術も次第にオープンソースになってきています。より多くの人が技術にアクセス出来るようになってきています。

また、今までは先進国が作った技術を発展途上国に届けることを考えてきましたが、当然ですが、途上国にも、様々な発明があります。これからはデジタル工作機械を使って、発展途上国で独自に最先端の技術を利用して、独自のニーズに応えるものを、現地の方が作れるようになってくるのかもしれません。

ある地域に向けて作られた技術がインターネットを通じて、別の地域で作ることが出来るようになります。「工夫」が物理的な障壁を超えて広がっていくのかもしれません。上述のリバースイノベーションは、企業が発展途上国向けに作った製品のことを指していましたが、これからは、個人が作った製品が、必要とされるところに広がっていくのかもしれません。

3. まとめに代えて

連載の最後に発散させるトンデモな連載となってしまい、まとめを書くことは出来そうにないので、余談を。編集を担当している方と連載のタイトルを考える中で、「国際開発」という言葉をあえて外してもらいました。国際開発とつくと、「日本」の生活に影響を与えない遠いところの出来事に思われてしまうように思ったからです。

上述の、「工夫」が物理的な障壁を越えていく未来が実現するかはわかりませんが、いずれにしても、今の消費スタイルは形を変え、より持続可能な形に変わっていく必要があります。今回の連載では、発展途上国という遠い国に向けて作られた技術が世界に広まっていく可能性、もしくは、発展途上国向けのものつくりの考え方が、先進国向けのものつくりの考え方を変える可能性を書きました(書けたと信じたい)が、きっと他のアプローチにもあると思います。

持続可能な発展を目指すアプローチ・国際開発のアプローチ・ものつくりの考え方の1つとして、読者の方々の頭の片隅に残るようであれば、幸甚に存じます。

もし、もっと話したいという方が、いらっしゃれば、是非、以下連絡先まで、ご連絡くださいませ。

田岡祐樹: yuuki.taoka *at* gmail.com

留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ