フィンランドからのトビタテ便り3〜もうひとつの最先端〜

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ホホウ! 本日の更新はフィンランドからのトビタテ便り3〜もうひとつの最先端〜です。本気で開発に取り組むってどんなこと? BOPビジネス、無償配布、ラストマイル、そんな言葉に興味のある人は要チェックです!!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

5月のトビタテ便りは3人のトビタテ生に書いてもらっています。本日の便りは、フィンランドで開発と工学の紡ぐ新たな地米を目指している田岡祐樹さんです。

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本文

ラストマイル:必要な人に届けるには

前回の連載で、人々の問題・ニーズを解決する技術について考察してきました。今回は、「技術をどう届けるのか」について書いていきたいと思います。「どこの・誰に・どうやって」届けるのでしょうか

3-1 誰に届けるのか

「届ける」とはいっても、誰に届けるのでしょうか。まずは、簡単に世界の人口と収入から、「誰」を紐解きたいと思います。

図は、世界の人口と収入を表しています。総じて、お金持ちの人が少なく、お金が少ない人が多い構造になっています。ここでは、いくつか重要なラインを説明したいと思います。年間所得20000米ドル(一日あたり約55米ドル)と3000米ドル(一日あたり約8.3米ドル)が大きな分かれ目となります。年間所得20000米ドル以上の人々は「お金持ち」となり、2つの線の間の人々は「中間層」、3000米ドル以下の人々をBOP層と定義します。本記事ではBOP層に届けることを考えます。[1 2] bopピラミッド_2

BOPとはBase of Pyramid の略で、2008年にC. K. Prahalad, Stuart L. Hartが出版したFortune of Bottom of Pyramid[3]の中で定義されました。世界で40億人の人々がこのクラスに入ります。この層の人々を対象にしたビジネスをBOPビジネスといいます。このクラスの人々へのビジネスは5兆ドルの可能性があると言われています。

図を見ていくと1000米ドル(一日あたり2.7米ドル)の線で、三角形が逆転していることがわかります。この線は、世界銀行が定義している貧困線にほぼ一致しています。この層の人々は特に貧困層と言われます。尚、世界銀行が定義している貧困線は、一日1.25USDドル以下を最貧困層(Extreme Poverty)、一日2 USD以下を貧困層(Poverty)と定義しています。[4]

BOP層は、貧困ゆえに割高・低品質なものを購入せざるを得ない、商品・サービスへのアクセスが困難/不可能な状態(BOPペナルティ)[1]にあると言われています。これは、道路などのインフラが整備されていないことによって輸送費がかかることなどが理由の1つです。例えば、第二回の記事で言及した石油ランプを利用するための、石油は東ティモールで購入すると日本の約2倍の価格になります。[5]

尚、貧困の定義には、絶対貧困と相対貧困があり、日本で話題となる貧困は、相対的な貧困を表します。相対貧困の定義には、国内の世帯の可処分所得の中央値の半分に満たない家庭を相対貧困と言います。[6]

3-2 どこに届けるのか

では、BOP層の特に貧困層に分類される人々や貧困層に分類される人々はどこに住んでいるのでしょうか。まずは、マクロレベルで見ていきます。

図は、それぞれ、一日1.25及び2ドルで生活する人々の人口比を表しています。

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一日1.25ドルで生活する人々

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一日2ドル以下で生活する人々

サブサハラアフリカ(アフリカのサハラ砂漠以南の地域)やインドなどの国々に住んでいることがわかります。

次はマクロに見ていきます。人々が生活している地域に合わせて、大きく農村の貧困(Rural Poor)と都市部の貧困(Urban Poor)にわけられます。都市部の貧困層はスラムと呼ばれる地域に住んでいます。農村の貧困に当たる人々は、言葉通り農村に住んでいます。対象とする人々によって、届け方も変わってきますが、ここでは、主に農村の貧困層が該当するラストマイルという言葉を紹介したいと思います。

ラストマイル

一番届けることが難しいエリアをラストマイルといいます。ラストマイルのイメージは第一回の記事を参考いただければと思います。届け方を考える上で、外すことが出来ない地域です。ここではNGO Kopernik[7]の定義を一部引用したいと思います。

都心部から遠く離れていたり、四方を山や海に囲まれ地形的に孤立している地域です。道が出こぼしていたり、何ヶ月も雨が降り続いたりするためにラストマイルへの配送は困難をきわめます。そのため、配送先から除外されている場合も多く、新しいテクノロジーの恩恵を得ることができません。たとえテクノロジーを届けることができたとしても、輸送費が高いため、必然的に製品価格も値上がりしてしまい、ラストマイルに住む人々では手の出ない価格になってしまいます。加えて、ラストマイルには電気や下水道といった基本的なインフラも通っていないことも多いです。
3-3 どうやって届けるのか

最後にどうやって届けるのかを考えていきます、お金が沢山あるわけではない・簡単に届けられない人々にどうやって届けるのでしょうか?

3-3-1無料で配る

無料で配るという方法が1つの方法です。製品そのものの価格の他、輸送費も、届ける側が負担します。「お金のない人に無料で寄付する」というと非の打ち所がないように感じます。しかし、無料で配ることは絶対的な正義ではありません。いくつか理由がありますが、まず。配ることと実際に使われることの間の大きな隔たりがあります。

例えば、発展途上国で健康上の大きな問題にマラリアがあります。マラリアの予防には蚊帳が効果的なので、蚊帳を無料で配布することは「手っ取り早い」解決策に思えます。しかし今までの報告では、勿論利用されている例もありますが、蚊帳が利用されず、ホコリをかぶっていたり、また、漁業用の網になったりすることもあります。網です。網。日々の食料を獲得するために利用されています。利用者はマラリアになる危険を理解していたとしても、毎日食事が食べられない危険と比較すると、当然ですが、毎日の食事のほうが重要なので、網として利用されます。また、蚊帳の下で寝ると悪夢を見るとの言い伝えが原因で、利用されないこともあります。無料配布だけでは意味がなく、効果をあげるためには、啓蒙などが必要であるということが広く理解されています。[8 *a]

次に、貰い慣れてしまうことがあります。「援助慣れ」という状態です。

例えば、トイレがない村にトイレを作るプロジェクトを考えてください。(届けるというよりは作るですが…)隣り合うA村とB村のうち、A村にNGO1がトイレを無料で作ったとします。両村の間には人の行き来があるので、情報は住民同士の情報交換を利用してB村に広まります。

しばらくして、別のNGO2がB村にやってきてトイレの重要性を説明し、販売することを提案します。しかしB村の村人は購入しようとはしません。NGO1がいつか無料で作りに来るかもしれないのに購入するというのは難しいですね。また、A村の村人は「貰った」ものなので、大切に使わない可能性もあります。壊れれば、またNGO1が作りにくるかもしれませんしね。

この例を読むと、「なんて怠け者なんだ」と思うかもしれません。

ポケットティッシュお持ちですか?そのポケットティッシュ買ったものですか?それとも、街角で貰いましたか?団扇をお持ちですか?その団扇は買ったものですか?貰いましたか?去年の夏に使っていた団扇どこにありますか?私は、ポケットティッシュは貰ったものですし、去年使っていた団扇は夏が終わる前にどこかにいってしまいました。僕がポケットティッシュを貰うときは、「家に大量にあるけど、タダだし貰っとくか。」と思っています。団扇がなくて暑い夏は、「早く何処かで団扇をもらおう」と思っています。大差ないのではないでしょうか。

またそもそも、無料で配るとなると、予算が必要になります。

ところで、第一回の連載で東ティモールにおける携帯電話の普及率について言及しました。携帯電話は無料で配られたわけではありませんし、利用することにもお金がかかります。「貧困層はお金がないから無料で配らなければ届かない」というわけではありません。

3-3-2 BOPビジネス

BoPビジネスは、008年に提唱されたビジネスであることは既にふれました。先ほどの図だと、日本などを対象にした市場は、図の一番上の人々を対象にしています。所得が多いので、高いものを購入することが出来るため、人数が少なくてもビジネスが成立します。一方で、BOPビジネスとは、最下層の人々にもビジネスをしよう。ということです。所得は少ないので、高いものを売ることは出来ないけれど、人数が多いので、薄利多売でビジネスができるということになります。現在は、様々なBOPビジネスが展開されています。一方で、ビジネスとして成功している例は必ずしも多くはありません。BOPビジネスについては、他のどなたかに譲りたいと思います。

尚、BOPビジネス支援センター[1]は以下のように、定義しています。

主として、途上国におけるBOP層を対象(消費者、生産者、販売者のいずれか、またはその組み合わせ)とした持続可能なビジネスであり、現地における様々な社会的課題(水、生活必需品・サービスの提供、貧困削減等)の解決に資することが期待される、新たなビジネスモデル

3-4 げんじつ…?

上述のように、無料配布・ビジネス共に100%完璧ではありません。理論はお腹いっぱいの頃だと思うので、現実にふれたいと思います。第二回の記事にて掲載したソーラーランタンを届ける場合を例にいくつか紹介したいと思います。

3-4-1 寄付する

例えば、100Thousand Solar Lantern Projectとして、Panasonicが寄付をしています。このプロジェクトは、2018年までに、計10万台のソーラーランタンを寄贈するプロジェクトです。主要な無電化地域である東南アジア、南アジア、サブサハラ・アフリカで活動するNGOや国際機関に寄贈しているようです。尚、初年度の2012年度には、ミャンマー3千台・インド5千台・ケニア2千台の計1万台を寄贈しています。ウェブサイトには喜ぶ人々の写真が沢山載っています。[9]

※上述の無料配布の難しさとこのプロジェクトの紹介は互いに独立しています。私がこのプロジェクトを批判するものではありません。

3-4-2 販売

販売するとしたらどうでしょうか。写真はタンザニアのArusha(キリマンジャロ山・タンザニア近く)で撮影したものです。様々な種類のソーラーランタンが販売されていることがわかります。この様なお店が街中に10軒以上はあります。ソーラーランタンの需要があること、また市民に購買力があることがわかります。

Arusha地区の電気屋さん

Arusha地区の電気屋さん

また、BOPビジネスは、先進国の企業が発展途上国に売ることを想定していますが、この写真の製品の全てが先進国企業によって作られているわけではないと思われます。

3-5 ハイブリッド?

とはいえラストマイルの項で書いたように、遠隔地では製品の値段は上がります。また、BOP層特に貧困層が購入できる程の価格にすることは難しいといわざるをえません。コペルニクというNGOのモデルを紹介したいと思います。[10]

コペルニクのモデルは、先述の両者のハイブリッドです。以下コペルニクの仕組みについてウェブサイトから引用です。詳しくはウェブサイトをご覧くださいませ。

頂いた寄付金は、テクノロジーを届ける資金として用いられ、現地パートナーが製品(テクノロジー)を販売すると、売上金から現地パートナーの活動費を引いた額がコペルニクへ返済されます。返済されたお金は、再びテクノロジーの購入金として活用し、さらに多くの人々へテクノロジーを届けていきます。
参考
[1]BOPビジネスとは BOPビジネス支援センター http://www.bop.go.jp/bop
[2]BOP Market – $5 Trillion: Total by Income Segment World Resource Institute http://www.wri.org/resources/charts-graphs/bop-market-5-trillion-total-income-segment
[3]Fortune of Bottom of Pyramid ネクスト・マーケット
[4]世界の貧困に関するデータ 世界銀行 http://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty
[5]なぜ日本企業は「ハイスペック」なのに失敗するのか? 世界24億人以上のニーズをつかむための「第3の選択肢」|世界を巻き込む。【エッセンシャル版】――日本のモノづくりで途上国のブルー・オーシャンをつかむために|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/50261
[6] [7]http://kopernik.info/ja/help/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F%E3%82%B3%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%AB%E7%9D%80%E7%9B%AE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%9F
[8]貧乏人の経済学 – もういちど貧困問題を根っこから考える
[9]100 Thousand Solar Lantern Project http://panasonic.net/sustainability/jp/lantern/about.html
[10]コペルニクの仕組み http://kopernik.info/ja/page/%E3%82%B3%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF

*a 無償支援に関しての議論はかなり深いです

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