強い磁石に振り回されること

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本日の更新は五月祭でのビッグイベント主催者によるコラムです。職業観のアップデートを人生の目標としている彼女は、一体なぜ、何を五月祭でやろうとしているのか? 必読です。

昨日、とある焼き鳥屋さんで30歳の大学生と一緒にお酒を飲んでいた。

紆余曲折して、学士→修士→社会人を経て、医学部に学士編入した人だ。

photo400-53彼はハーバードに研究留学をした医学部生なのだが、それだけ聞くとなんだかすごい人だという曖昧にすごそうなイメージを持ってしまうが、その紆余曲折を知ると、なるほどそういう経緯で医学部なのか、ハーバード留学なのか、と腑に落ちる。

どんな「なんだかすごそう」な人にも、その「すごさ」がハリボテでない限り、そこに至るまでの色々な経緯があって、それを知ると、その「すごい」場所に立っていること、「すごい」肩書きを持っていることが、なるほど、だからか!と飛躍なく納得できるし、曖昧なすごさが、具体的な親近感に置き換わる。

お酒を飲めば、皆ただの酔っ払い。飲んで話せば、「正しさ」はあまり関係ない。面白いかとか、楽しいとかしかない。「正しさ」の外で何かを共有する、共有してる人がいるということはすごく大事だな、とこのごろ離島で生活をしているととても強く思う。効率とかスピードとか下準備の良さとか正しさとかではなくて、「人柄」「人のよさ」で仕事をしている人の多さに、驚いた。

田舎では割とどこでも、このような感じみたいだ。会議では結論が出ないし、議題のない会議も多い。最初はやばいな、何とかしなければ!と思っていたが、そこのやり方を否定せずに、効率的なやり方を無理に持ち込まずに、うまくペースをつかんで、その場所のやり方に合わせながらやっていきたいなと今は思う。効率や正しさ以外のところで仕事ができる人たちって逆にすごいなと思えてきた。やりたいことややるべきことを見失わずに、郷に従っていきたい。

お酒の話に脱線しがちだが、お酒や田舎の話は置いといて…

201202162000私は海外旅行が好きなのだが、旅行に行くときに、現地の人と仲良くなったり、ちょっと現地の言葉も理解したくて、多少長めの旅行をしたい人におすすめなのが、短期留学。中学生の時に2週間だけカナダ、大学生になってドイツや中国に4週間ずつ行った。

どういうところに行くかにもよるかもしれないが、留学先が語学学校ではなく、大学や語学学校だとしても大学の付属の学校だったりすると、現地の大学生たちと交流する機会も増える。どこの国に行ったときにも最初の5分10分で聞かれたのが、将来どういうことしたいか、だ。

日本だと、「大学生なの?」「へー早稲田なんだ!サークルとかやってるの?」、東京だとこのあと、「まじか、じゃあ○○とか知り合いだったりする?」が続いたりする。

外国に行くと、「日本の大学生なの?」「へー東京にあるんだ。学部/専門は?」「じゃあ将来は会計士か会社で経理とかやるの?何するの?」という流れに大抵なる。別に意識高い学生の会話ではなく、居酒屋やバーで知り合ったとしても、ほぼこういう流れはある。


 

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どこの国でもこうなのか、日本だけ変なのかなと疑問に思って、私は韓国に留学に行った。

韓国は、世界で一番大学進学率が高い国で、芸能人だって大抵大卒。受験戦争が激しいイメージもあったし、警察が試験時間に遅れそうな受験生を受験会場に送るという写真は、確か中学生のころ、社会の教科書で見た記憶もあった。高いといわれる日本の自殺率をも上回っている。(2010年には、人口10万人あたりの自殺者数で世界1位になるほど。)財閥企業で働く人が勝ち組とされたり、勝ち組負け組意識も強い。

そんな韓国であれば、学部なんて特に思い入れもなくて、「将来就きたい仕事は?」と聞くと、『え、仕事?会社員かな。できるだけ有名な会社で。』なんて答えが返ってくるのではと想定していた。

職業観のねじれは、多くの外国<<日本<<<<<<<<韓国だと捉えていた。しかし、そんなことはなかった。別にアンケート配って職業観にかかわる意識調査等をした訳でも、意識高めなイベントにいって質問した訳でも、留学生ばっかりが受ける英語での授業を受けに来ている韓国人にばかり聞いた訳でもない。

できるだけ意識低い層が集まりそうなところにいっぱい行った。意識低いアピールもしっかりした。まあ、ご察しの通り、お酒である。

外国人、韓国人、日本人含めてよく飲みに行った。居酒屋で知り合う韓国人も多くいた。英語で話こんでいる外国人たちが突然急に韓国語でコールをふったりしているので、絡みたくなるのもわかる。

韓国の高麗大学というところに留学をしていたのだが、高麗大学は韓国の早稲田大学と言われるだけあって、早稲田同様、高麗大学もキャンパスと居酒屋街の近さに魅力を下支えされている様なところだった。居酒屋で仲良くなった韓国人が自分の友人を指さして、

「こいつ、会計士を目指してるんだけど、去年公認会計士の試験に受かって、めっちゃ優秀だし、夢もあっていいやつなんだ」

と言って来たり、英語も日本語も話せないからとLINEの日韓翻訳機能を使いながら、

「俺の夢は弁護士なんだ。だからあんまりお酒を飲んでる時間なんてないんだけど、勉強しないといけないんだけど、今日は休み笑」

と聞いてもいない夢を教えてくれる人が居たり、日本よりぜんぜんまともじゃないかと思ってしまった。


韓国への留学に行くまで、私は「偏差値」というのが職業観のねじれの根源だと思っていた。

たとえば、
ドイツはクラフトマンシップが整っていて、”所属する会社ではなくて、従事する職種が彼らの誇りである。だから、中小工場のみならず、大工場でも、現場責任者であるマイスターたちは、経営者を同僚と考えているケースが多い[1]”そしてドイツには、大学等の学校の偏差値という概念がない。そもそも「いい学校」というのが通じない。学部やそこにいる先生、学校の設備などで大学を決める。自分の教えてもらいたい教授が別の大学に転勤になったら、退学してその教授の勤務する大学に入りなおす人もいるくらいである。

偏差値がないから、一般的な価値軸が存在しないから、みな自分なりの価値軸をもっていて、職業観のねじれがないのだろうと思っていた。

それもあるだろうが、韓国に行って、同じ偏差値がある国にいって、より「いい学校」への意識の強いだろう国で過ごしてみて、他にも要因があるのだとわかった。

おそらくそれは、「総合職の存在」だ。

韓国は学歴社会だ。だから、経済学部に行けば、経理や会計士になったり、家業の経営に携わるというのが普通である。新卒で総合職というのはあまりメジャーではないからだ。ゆえに、大学での成績は就職においてたいへん重要である。教育に職業的な意義があるので、あまり私は何をがんばればいいんだろう状態(私は勝手にホワイトアウト状態と呼んでいる)にならないのだと思う。

それに比べて、新卒採用で総合職をとるのがメジャーな日本では、大学での学びが仕事に直結しないので、学術的な目標は持ちにくい環境にある。また、学校の外で何をがんばればいいのかという軸も見えづらい。留学しないよりした方がよさそう。インターンもした方がよさそう等という発想になりやすい。

そんな何をがんばればいいのか分からない、どっちに向かえばいいか分らないホワイトアウトしている人や、一般的な軸だけを頼りに頑張ってきて、自分の軸が羅針盤が見えていない人のためになるんじゃないのかなと思って企画しているのが、このイベントだ。

11207996_935224383229250_189665868_ohttps://docs.google.com/forms/d/13YnFVKipqdapvC5WhBzKgMULoFt6PGOMlZBQOCBU6-Q/viewform

私の留学計画の企画書についてコメントして頂いた、クリエイティブディレクターの永澤さん。トビタテへの応募以前から交流のあった、美容師のエザキさんや漁師の大野さん。留学直前に知り合い、「韓国で公演をするんです」「私も留学で韓国にいくので、何かあればお手伝いします」と連絡をとりあっていて香瑠鼓さん、トビタテ生からも個性あふれる3人に、うち2人は現地アメリカとバングラディッシュから中継でも登壇をしてもらう。

イベントに来たからといって、自分の羅針盤が読めるようになる、やりたいことがすぐに見つかる、なんてことは考えていない。もちろんそうなれば、いいのだが。「いい学校、いい会社」だったり「(しないより)留学した方がよさそう」だったりは、何をしたいかわからなくなった時に、頼りやすい指標だし、頼ることを否定する気は全くない。わからないときには、じっと動かないよりも、とりあえず飛び込んでみる、向かってみるということはすごく大切なことだろう。

「大企業よりベンチャーだ!」「日本の大学より海外だ!」等とメインストリームに代わる新たな指標を提示する気もない。登壇してもらう10人は、自分の羅針盤の指す方へと進んでいる。10人ともそれぞれの方向に向かっているし、10人の磁気はきっとすごく強い。話を聞くことで、きっと羅針盤は磁気異常を起こしてぐるぐるとまわり、何が正しいのか、自分が何をしたらいいのか、はきっともっとわからなくなる。しかし自分の羅針盤を読むためには、正しい方向は一つではないということを「具体例をもって」知ることが必要だと思う。各部5人の登壇者がいる。5つの磁石、あるいは10の磁石に振り回されてみてほしい。自分の羅針盤が読めるようになるのはきっとそのあとだ。

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トビタテ!留学JAPANのプログラム応募時点で、私はその「手厚い奨学金」に興味がなかった、と言えば嘘にはなるが、どちらかというとそこに集まるだろう変わり者1期生のコミュニティー企業との就活を超えた繋がりに魅力を感じて応募した。

しかし、ログインの手間を理由にか、あまり機能していないトビタテ生用のSNSと協賛企業の方とは直接会って話をする機会も特にないのが現状である。留学を通してやりたいことについてもっと企業の人からアドバイスをしてもらえたり、「あ、うちの会社ドイツに支社があるんだけど、デュッセルドルフ支社のなんとかさんとかそういうこと協力してくれるかも」等、あわよくば留学先の国の人の紹介をしてもらえたり、トビタテのメンバー同士でお互いの企画に指摘をし合ったりする機会がいっぱいあったりだとかを期待していた。

トビタテのプログラムを利用して留学し、帰国したいま、私は甘えていたなあと思う。自分からトビタテ生同士で集まる機会をつくったり、イベントを企画してみたり、企業の人に多少しつこいくらいのアタックをしなければ、自分の留学計画を気にかけてくれたり、それについてのコメントや助けをもらえることなんてない。トビタテを整備された道として捉えるのではなく、自分で切り開いていこうという姿勢で利用するべきだったなあと今は思うし、そういう姿勢でいれば、応援してくれる人もいっぱいいるし、巻き込みやすいコミュニティーでもある。

このイベントを企画・運営するなかで、いろんな人を巻き込み、巻き込まれ、私には、私たちには応援してくれる仲間がいっぱいいる。

このイベントを一緒にやろうという誘いを鈴木さんにうけて、飲んだことある人だし、多少かかわるか!と思った過去の自分の判断に、もとい誘ってくれた鈴木さんに、手伝ってくれているトビタテ生に、記事を書くのがやたら遅れるのに、いろいろと気を使ってくれている発信局のえいさんには、感謝しかない。トビタテなんて興味ない人、留学にすら興味ない人に届けたくて、トビタテの愚痴を出したり、アルコールネタに偏った記事を書こうと思うんですが、どうすか?と聞いて、「なにかあったら一緒に謝りに行こう笑」「いいんじゃない。」「飲みにいこう。」と言ってくれた五月祭広報チームの4人も。

そして、実はこの5月16日というのは、トビタテ1期生の1,2月帰国者の事後研修の日でもある(事後研修に出なければ、奨学金の返還を...という規約がある)のだが、このイベントにかける想いを組んで頂いて、応援をしてくれているプロジェクトディレクターの船橋さんを始めとする、文部科学省のトビタテ事務局の方々にも感謝している。

[1]小塩節「ドイツ語とドイツ人気質」より引用

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