カンボジアからのトビタテ便り1 〜学生マネージャ時々サムライ〜

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本日の更新はカンボジアからのトビタテ便り1 〜学生マネージャ時々サムライ〜です。カンボジアで泥棒と戦いながら、現地人相手にマネジメント!? トビタテ史上、最も「これはバイタリティつくわ」と思わせた彼女の便りを要チェック!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

5月のトビタテ便りは3人のトビタテ生に書いてもらっています。本日の便りは、カンボジアから。現地で「サムライカレー」にインターンし、バイトには逃亡され、家には泥棒が入り、それでも頑張る嶋村温子さんです。マネジメントの難しさ、面白さを語ってもらいましょう!

はじめに

こんにちは!
まずは簡単に自己紹介からよろしくお願いします。

●氏名 :嶋村温子(しまむらあつこ)
●在籍 :横浜市立大学 国際総合科学部経営学コース
●留学先:サムライインターナショナル株式会社(プノンペン/カンボジア)
●期間 :2014年9月1日〜2015年8月31日(1年間)

今回は3章に分けて紹介していきます。

 

第1章 マネジメントとは
第2章 〜理論〜 人的資源管理論
第3章 〜実践〜 カンボジアでのマネジメント ーヒト編

 

第1章 マネジメントとは

私は経営学を専攻しており、経営管理論をゼミで学んでおります。

 

「そもそも経営管理論ってなに?」
「マネジメントって学ぶ必要あるの?」
「入社してすぐ使えない学問では?」
もちろん、新入社員からマネジメントをするのは珍しいですし、経営学の知識がなくてもビジネスが成功している経営者もいます。しかしながら、マネジメントは若い時に知れば知るほど良いと、私は考えます。
下記のような言葉を、ドラッカーは残しました。
「マネジメントとは、伝統的な意味における一般教養である。知識、自己認識、知恵、リーダーシップという人格に関わるものであるがゆえに教養であり、同時に実践と応用にかかわるものであるがゆえに教養である。
したがってマネジメントに携わる者は、心理学、哲学、倫理学、経済学、歴史、物理学など、人文科学、社会科学、自然科学の広い分野にわたる知識と洞察を身につけなければならない。それらの知識によって成果をあげなければならない。病人の治療、学生の教育、橋の建設、ソフトの設計と販売など、成果をあげることに使わなければならない。
[ 出典:「新しい現実」ピーター・F・ドラッガー]
マネジメントは人間観、世界観、歴史、倫理観、行動基準など様々な分野について学び、かつ実体験を身につけてこそ成立する学問です。
だから経営管理論は他の学問と密接に繋がる学問なのです。

 

そして私が学んでいる経営管理論には様々な定義がありますが、一文にまとめると
企業活動を円滑に行うため②企業の目的を達成するため、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つのリソース(経営資源)を有効に活用し経営効率を最大化させる諸活動のこと」です。

 

「ヒト・モノ・カネ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今日では技術の重視や IT(情報技術)の発達などにより、「技術」「情報」(あるいは両方を合わせた概念)をヒト、モノ、カネに付け加えるべきという意見が多いため、4要素の経営資源で考えるケースが多いです。

 

そこで今回は、この4つの経営資源+マインド(マネジメントをする上での心構え)の理論を留学先であるカンボジア版に当てはめていく記事を連載していきます。

 

第1回目 ヒト編
第2回目 ヒト(続き)・モノ編
第3回目 カネ・情報編
第4回目 マインド編

 

ヒトは2回に分けて連載していきます。
この記事を通して、経営学専攻の方も違う分野を専攻の方にも経営学の面白さ、そしてカンボジアの「へぇ!」が増えたら嬉しいです!

2章 〜理論〜 人的資源管理論

さて、第1回目は「ヒト」について紹介していきます。ヒトは、経営資源を構成する 4要素の中でも最も基本的かつ重要な構成要素です(もちろん業界・業種にもよります)。理由は大きく分けて2つあります。

 

一つは、他の3要素(モノ・カネ・情報) は、ヒトによって動かされることで初めて、その本来の役割を果たすことができるからです。どれだけ資本や良い原料、施設等が整っていても、経営者や従業員、スタッフがうまく活用できなければ全く意味がありません。
二つ目はモノ・カネ・ 情報とは異なり、ヒトは生身の人間だからです。当然ではありますが、人間は喜怒哀楽の感情をもちまた高度な思考をする主体であるため、そのヒトの潜在的能力や強みをいかに発見し、最大限に活かせるかが重要になります。

 

そのヒトに関する研究が「人的資源管理論」です。この人的資源管理論は、かつては経営労働論や労務管理論などと呼ばれていました。日本で人的資源管理論という呼称が一般的になってきたのは1990年代に入ってからです。つまり、ほんの十数年前に生まれた学問なのです。
そしてこの呼称の変更には、非常に重要な意味が隠されています。20世紀初頭までは主に生産面を重視した理論であったため、人的資源への配慮が見られませんでした。そういった背景から批判が相次ぎ、人間の持つ心理面や行動面を重視するようになり、今日ではヒトも重要な資源の一つとして「人的資源管理論」が生まれました。

 

⼈的資源管理論は⼈の⼼理と⼤きくかかわるため、これらの⼼理的アプローチが必要になります。
今日では、ヒトの行動モデルを考慮した企業活動が積極的に行われています。行動モデルを考え動機づけを行う理論としては、2つの理論があります。
第一は基礎的理論であり、個人がどのような場合に組織に参加するのか、組織はどのように存在できるのかを述べたものです。第二は実践的理論であり、個人はより大きい満足を求めて組織に参加すると考えて作られるものです。

 

この2つの理論からそれぞれ代表される理論の一つを取り上げて、カンボジア版に当てはめていきます。
今回は基礎的理論、次回に実践的理論に触れていきます。
 
 

第3章 〜実践〜 カンボジアでのマネジメント ーヒト編

基礎論的理論には、マズローの欲求5段階説や組織均衡論、欲求待理論、ハーズバーグの動機づけ理論などがあります。
その中でもマズローの欲求5段階説は心理学の一つですが、経営管理論でも重要な学問です。人間の欲求や動機を5つの階層で捉えて、その頂点に自己実現があるという考え方です。
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(出所:http://www.bluesnap.jp/pmbok/index)
上図のように、下から
①生理的欲求(飲食や睡眠に村する欲求)
②安全欲求(身体危険や経済不安を免れたいという欲求)
③社会的欲求(友人との友好関係や愛情への欲求)
④尊厳欲求(地位などへの欲求)
⑤自己実現欲求(創造的な活動などを成し遂げたいという欲求)

 

で構成されています。低階層の欲求が充たされると、より高次の階層の欲求を欲するというものです。

 

日本や他の先進国では図にある低次の欲求はほとんど充たされています。そのため、高次の欲求である尊厳欲求と自己実現欲求を求めていることが多いです。
一方、新興国や発展途上国では低次の欲求が強くなります。
 

 

とは言いますが、本当なのでしょうか。

 

結論は……本当でした。
実際にインターン中に起こった2つの出来事から説明していきます。

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①上図のものは、あるスタッフがFacebookに投稿したものです。内容は、
『自分の誕生日がもうすぐ!今の携帯はすぐ電池が切れてしまうため、新しいものが欲しい。ただ買えるほどのお金がなく、どうすればいいのか…。』

 

というものです。おそらくほとんどの人が「へーそうなんだ」と思うだけでしょう。
でも、図の上部分に注目してみてください。「他3人」とあります。

 

そうなんです。タグ付けされているのです。タグ付けされているのは私の他に日本人のお友達やカンボジア人女性です。
つまり、このタグ付けしている人に誕生日プレゼントに投稿した画像の携帯(しかもサムスンのこの機種と詳しく説明付き)を欲しいとお願いしているのです!

 

そのスタッフとすごく仲良くなったと感じた矢先でした。もちろん携帯は買いませんでしたが、その後もバイクが欲しい、パソコンが欲しいとメッセージが来たりFacebookでこのようにタグ付けして投稿することがありました。
カンボジアの人たちは日本人、いわゆる「外国人」はお金をたくさん持っていると考え、欲しいものを頼んでくるということは結構あるケースのようです。

 

自分がタグ付けされたこの投稿が来た時の悲しさは、忘れられないです。
あくまでもカンボジアでは自分が「外国人」であるということを改めて感じた出来事のひとつです。
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(お盆休みにスタッフの故郷へホームステイに行った時の一枚 ※このスタッフの話ではありません)

 

②もう一つは、私の中では留学生活の中で一番ショックな出来事でした。
ある日、カウンターにいた私はキッチンに呼ばれて5~7分ほどいました。
戻ってくると、カウンターに置いていたiPhoneがなくなっていました。その時の時間はお昼過ぎで、お客様がいない時間でありスタッフの女の子一人しかホールにいません。
あれ…?疑いたくないんだけどももしかして…この子に盗まれたのか?いや、でも疑いたくないし…でもさっきから挙動不審だなあ
心の葛藤がありつつも、「私の携帯ここに置いて無くなってしまったんだけど、知らない?」と聞いたりしましたが、知らないとのこと。

 

そして、次の日から彼女はお店に来なくなりました。

 

この事件は、短時間であれ日本の感覚でカウンターに携帯を置いていた私に責任がありました。しかし、信用していたスタッフ一人しかいないからと安心しており、自業自得と頭ではわかっていても裏切られたような気持ちになりました。
カンボジアではPCやiPhoneなどの電子機器は高価なものとされ、ひったくりや盗難も多いです。近年発展スピードが著しいプノンペンではありますが、まだまだ貧困の差は激しいです。給料が十分もらえないために、仕事を掛け持ちしたり、給料が高い仕事先に行くために急に辞めたり(いなくなったり)も最初はしょっちゅうありました。
ちなみに、カンボジアの人たちは自分の給料をお互い見せ合います。つまり、みんな誰がいくら給料をもらっているか把握しているのです。そのために「何で俺の方が給料が安いんだ!」と揉めることもありました。

 

ここで理論に戻りましょう。
このように、カンボジアでは仕事で一番重要視しているものは「お金です。
もちろん日本でもアルバイトや仕事をする際に時給や給料を見ますよね。
でも日本人なら、英語が話せると給料が倍ほど変わる環境であっても、話せないのに履歴書に「英語を話せる」と嘘は書かないでしょう。
面接時にコミュニケーションが取れないので、すぐバレますが、それほどカンボジアでも英語は重視され、特に若者は英語が話せる人は多いです。
また、スタッフの中には、田舎からプノンペンに出稼ぎに来ている人もいます。親に仕送りを送っている人もいます。

 

つまり、上記に述べた通り、
カンボジアといった新興国では、マズローの唱えた②安全欲求(身体危険や経済不安を免れたいという欲求)が私たちのような日本人と比べて十分には満たされていないのが現状です。
もちろん、全てのカンボジアの人たちに当てはまることではありません。注意して欲しいのは、低次欲求が十分に満たされていなくとも高次欲求を求める人もいます。
尊厳欲求や自己実現欲求を強く求める人もいます。DSC_0167IMG_2072
マネジメントをする上で大事なのは、一人一人と真摯に向き合い、その人個人の価値観や背景を理解し、求めている欲求を満たせるような職務を配分することです。
上記のような信じられないと感じる出来事も、日本の「常識」を押し付けているだけかもしれません。自分の求める欲求(高次欲求)を相手も求めているはずと勘違いしているかもしれません。
「カンボジア人は〜だから」と一括りにしてしまうのではなく、まずは一度そう考えてしまった自分自身を見つめ直すことが大切です。

 

・ヒトが一番重要な経営資源であること
・新興国と先進国では求める欲求が異なること
・自分が「外国人」であるということ
 
この3点が新興国でビジネスをする上で重要なことだと考えます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次回は「カンボジアのマネジメント〜ヒト(続き)・モノ編〜」について紹介していきます。
飲食店の最初のプロセスである仕入れ先(卸しや市場など)や消耗品、食品などどこで手に入れているのか、仕入れる上での留意点などを紹介していきたいと思います。

この人に、留学相談したい方は、Diverseasからどうぞ

2 件のコメント

  • 具体的な体験と理論をしっかり結びつけて話していただいてよくわかり、勉強になりました。
    時代も変わり、欲求の段階が6つ目、7つ目ともしかすると増えるかも知れないですね。脳科学でも人間の3つの本能として、「生きたい」「知りたい」「仲間といたい」があり、それとも結び付いていると感じます。
    豊かな国に生きる人たちが、次代に何をモチベーションとして生きていけるのか。今後の日本の重要な課題ですね。
    これからも、実践的な研究続けてくださいね。
    応援してます。

    • 樋口さん
      コメントありがとうございます!とても励みになります。
      マズローが提唱した欲求5段階説は1960年代後半なので、確かに今は欲求が増えている、多様化してきているかもしれません。
      本能に「仲間といたい」という、他者が存在することが前提のものがあるのは面白いですね。
      恥ずかしながら脳科学の知識はほぼゼロなので、そちらについてもこれから勉強していきます。
      今後も理論と実践を常に意識して努めて参ります。