オーストラリアからのトビタテ便り2 〜田舎に泊○ろう!:破〜

 

本日の更新はオーストラリアからのトビタテ便り2 〜田舎に泊○ろう!:破〜です。誰が読むのかこんな記事!? という濃い連載をお願いしています。農業生活でトビタテに合格した河島さんの一日を覗いてみましょう!

トビタテ便りとは

トビタテ便りの詳細についてはこちらのページをご確認ください。世界中に留学しているトビタテ生から、週に1度1ヶ月の短期集中連載を行ってもらっています。ルールは2つ。「留学先の写真を載せてもらうこと」と「普通の友達には話せないような濃ゆい専門の話を思う存分ぶちまけてもらうこと」です。

4月のトビタテ便りは3人のトビタテ生に書いてもらっています。本日の便りは、シドニーとかにいる河島健太さんから。誰が読むのかこんな記事! という程本気で語る「農業」をお楽しみください。(第一回はこちら

本文

さて、今回から本題のこの連載!
「~田舎に泊○ろう!~」という某テレビ番組をモロパクリしたタイトル。
そう!私は今、オーストラリアで一宿一飯の恩義の為に日々労働している!

正確に言うと、WWOOF(Willing Workers On Organic Frams)という世界的なNGOを通して、
オーストラリアの農家でファームステイをしながらフィールドワークを行なっている。

フィールドワークとは。
簡単に言うと、屋内に籠もって研究してないで、お外で五感を使って研究しましょう。というものだ。
難しく言うと、調査対象である現地を直接訪れ、研究対象とラポール(信頼関係)を築き、観察・聞き取り・アンケート・資料採取によって調査を進める方法だ。この研究は学問的で客観的な成果を求めるものであり、単なる旅行や冒険とは異なる意味合いを持つ。

そして、私が行っていることは、私の研究対象であるオーストラリア農業(※私のプロフィール参照)に従事する人々の本音を聞き出すことだ。いきなり「本音教えてください!」と初対面の人に言っても受け入れられることは難しい。そこで、同じ家に住み、同じ釜の飯を食い、共に働き、たまには酒を飲み交わすことで、信頼関係を構築し、対象の奥底に眠る本音を引き出そう!というものだ。

そして今回からはタイトルにある通り、彼らがどのような生活を送っているのか。読者の皆さんは知らない方がほとんどだろう。私の留学の最終目標は「農業ってパネェ。」と若者に言わせることである。その為の前段階として、農業の実態の周知がある。というわけで…。
今回はファームステイの事例として、肉牛農家での滞在例を紹介していく。

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まず、現在滞在している農家について紹介する。
Sydneyから電車で北へ2時間弱、車で30分ほど移動したkulnuraという田舎に来る。トム(76)とシャロン(73)がホストになる。トムはスコットランド出身で15歳の時に、親元を離れて移住してきた。

そして彼、スコットランド訛りがやばい。
しばらくしてからスコットランド出身ということを聞いたため、初めてオーストラリアに来た私は「おぉ……これが噂に聞く、ガチのオーストラリア訛りか…エグいな…」と思っていたわけだ。

トムの牧場にはAngusというスコットランド品種の牛がおり、家庭消費用とオーストラリア国内に出荷している。
トムの口癖「和牛は世界一だぜ!」
トムに限らず、Wagyuは世界中で評価を受けていて、なぜかオーストラリアでは神戸牛と但馬牛が有名だ。居留地の関係だろうか。

トムが持つ農地は50エーカー(約450×450メートル)とオーストラリアでは小さい部類になる。

 

とはいえ、この農地を手入れするためには、農業機材が必須だ。
トラクターやトラックは言うまでもなく、芝刈り機や小型建設機械(ボブキャット)もある。

 

 

家は平屋で、プールは池、昼寝は牧場、夜には満天の星空。携帯の電波はいつも死にかけだが、素敵な場所だ。

ここでなら、他の農家滞在者であるオランダ人美女と水辺で戯れるのも夢ではない。

 

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さて、滞在先の紹介はこの程度にしておいて、1日の主な流れを追っていこう。

7時:起床

8時:朝食
ファームステイの主流はセルフ朝食だ。
自分でシリアルを盛り、パンをトーストして、食事を済ませる。

8時半:仕事開始
オーストラリアでは涼しい午前中のうちに仕事することが好まれる。
芝や水を給餌する為に牛を移動させたり、フェンスを直したり、干し草を運んだりする。
交配時期(Embryo Transfer Program:後半掲載)にはホルモンを定刻に注射したり、交配施設の清掃をする。

 

 

12時:ランチ!
どんなに忙しくても12時になったら仕事をパタリと止めて、ランチをとるのがこの農家の流儀。
パンや野菜・チーズを切って、盛り付けて、みんなでサンドイッチを作り食べる。毎日、ランチがサンドイッチだと飽きそうだが、野菜も豊富で、ジャムもチーズもハムもあるので、意外と飽きない。

13時:仕事再開
日差しが強いときは少し屋内でのんびりすることも。やれることをやれるときにまったりとやっていく。割りと多い仕事が牧場内の雑木林で、トラクターによる草刈り→大きな木や石拾い→再度草刈り、というものだ。乾燥地であるオーストラリアでは山火事が大変多く、手入れを怠ると自然発火の原因となってしまう。その為に、草刈りをするわけだが、大きな石や太い木があるとトラクターの刃を痛めてしまう。その為、機械と人力をうまく使いながら、上手に仕事していくのだ。
そして時には大型のトラクターで牧草の刈り込みを行うことも。

 

 

16時:仕事終了
早いときには16時で終わるが、遅いと18時近くまで仕事することもある。
平均的に6~7時間働く。オーストラリアは日本に比べて日も長く、ついつい遅くまで仕事していることもしばしばである。

17時:ビールタイム!
もはやこの1杯の為に1日仕事していると言っても過言ではない。
案の定、オーストラリアの農夫は、見事なビール腹が多い。自戒を込めて。

 

18時半:夕食
農家滞在での仕事はまだまだ終わらない。手が空いているのなら、料理の手伝いをする。野菜を下準備したり、肉を焼いたり。オーストラリアでも米は決して珍しい食べ物ではなく、たまに食べる米はとても美味しい。

20時:自由時間
寝てしまうのもよし。ネットサーフィンしたり、家族とテレビをみるのもよし。本当に疲れた日には、酒も回り、そのまま気づいたら寝ていたなんてこともよくある。トビタテの月間報告書を書いたり、ホストや他の滞在者とラポール(信頼関係)を築く為には、フィールドワーカーとして、休まる時はないと言ってよい。
何気ない日常会話から農業や国際的な話題まで、幅広くこなしていく。若い滞在者同士では、お互いの意見や夢を語ったりすることも多々ある。1日の中で私が最も好きな時間でもある。

23時:就寝
シャワーは夕食前か就寝前に浴びることが多い。欧米人は1日くらいシャワーを浴びないこともザラだが、合わせる必要はないと思う。少しでも自分にとってストレスが少ない生活をすることを心がける。ただ、オーストラリアでは水は貴重なので、浪費には注意したい。

肉牛農家の1日はいかがであっただろうか。

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さて、ここからは肉牛農家最大の楽しみの1つでもある「Embryo Transfer Program」について説明していく。
直訳すると、胚移植計画である。分裂初期の受精卵を子宮に移植することだ。
簡単に言うと、繁殖牛にホルモンを定刻(朝・夕)で1週間ほど打ち続け、その後に人工授精による体内受精を試みる。無事成功すれば採胚した時に受精卵が取り出せるという仕組みだ。そしてその分裂初期の受精卵は母牛に移植したり、希望農家に販売したりする。

私はこのプログラムを経験したので、画像と共に紹介したい。

・ホルモン注射
まさか人生初の注射(打つ側)が牛に対してなど、誰が予想しただろうか。しかし方法はいたって単純だ。まず、牛の背中の尻尾近く(サーロインからランプあたり)をなでたり、たたく。そうすると牛の注射によるショックが和らぎ、びっくりして暴れることが減るのだとか。そして、定量を薬ビンから吸い出し、指で弾いて空気を抜き、勢いよく刺す!あとは薬剤を押し入れるだけ。慣れてしまえば、良いストレス解消になるかもしれない。

・ヒートシーカー貼り付け
ホルモンによって繁殖準備が整えられると、その証拠として牛は他の牛に飛びつく。これをジャンピングというが、いわゆる発情状態である。この時、写真にあるヒートシーカーが前もって牛の後部に貼られている場合、被ジャンピング時の衝撃でこれが割れ、赤く印が出るというわけだ。つまりどの牛が繁殖準備が整っているかが、一目で分かることになる。あくまで目安に過ぎないが、これで農夫が一晩中牛を監視しなくても良いということになる。

 

・精子注入/受精卵確認
これは専門家の仕事だ。わざわざビクトリアからやってきた専門家の彼はとても忙しい。国内でもそれほど多くない、この繁殖技師の仕事スケジュールは非常にタイトだそうで、通常その農家の家に前泊することも多いそうだ。ある州から別の州まで家にも帰らずに徹夜で車を飛ばすこともあるのだとか。そんな彼らの手によって、精子の注入と、後日受精卵の定着確認が行われる。写真は肛門から糞を掻き出し、30cmほどの管を子宮に差し込み、受精卵を採取している様子。これらは液体窒素で保管され、電子顕微鏡で確認される。

 

 

 

 

私が体験したプログラムは以上だが、皆さんは牛の妊娠期間を知っているだろうか。
人間と同じ10か月である。

これほどまでに大きさ・姿が違っても同じ日数が掛かる。生命の不思議さに触れた滞在とプログラムであった。

日本スーパーの肉売り場では感じられない、「生の声」「リアルなオーストラリア」がそこにはあった。

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