ヨーロッパを主導した分野の仕組みや建築家の取り組みを実践的活動を通して学ぶ

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本日の更新は鈴木隆平さん(自然科学、複合・融合系/スイス連邦)の紹介記事です。デザイン、建築というものを語らせれば止まることを知らない彼はなぜスイスでのインターンを選んだのか? 要チェックです。

1 13.28.09

基本情報

氏名:  鈴木隆平
コース: 一期生/自然科学、複合・融合系コース
在籍:  東京工業大学大学院 建築学専攻 修士課程
受入先: Hosoya Schaefer Architects(建築設計事務所)/チューリッヒ(スイス)
期間:  2014年9月〜2015年8月
出身:  東京都八王子市
出身校: 桐光学園(神奈川県)
趣味:  カメラ、野球、ラーメン二郎巡り、広く浅くアイドルを応援すること

はじめに

ここでは官民恊働留学支援制度〜トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム〜(以下トビタテ)の書類審査用に提出したテキストの引用を掲載したいと思います。稚拙な文章ではありますが、今後トビタテに応募しようと思っている方の参考になればと思います。
(太字への変更、文章の割愛、写真の挿入など一部実際の応募書類とは異なる箇所がありますのでご了承ください。)

(以下引用)

留学計画

・スイスの建築設計事務所Hosoya Shaefer Architectsにて設計スタッフとしてインターンを行うこと。

・スイス国内で行われるデザインワークショップに参加し、スイスの子供達や学生と国際交流を図ること。

・日本での修士論文(又は修士制作)のためのフィールドサーベイを予定。主題は「都市の発達と自然環境の調和を併せ持つ都市の構造とその発展過程(仮)」。

留学目的

・サステイナブル政策による、環境に配慮した建築、再生可能エネルギー、廃棄物の管理とモビリティといったヨーロッパを主導した分野の仕組みや建築家の取り組みを実践的活動を通して学ぶこと

・ワークショップを通した学生や子どもたちとの交流や、実施図面の作成・現場管理から日本とスイスにおける自然環境、インフラストラクチャー、建築に対する価値観などを比較・考察し、新たな価値観を双方に創出すること。また、そのきっかけをつくること。

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(↑Vitra Design Museumでのワークショップの様子)

DSC_0191(↑都市と自然が一体となったZurichのランドスケープ)

 留学に至った経緯

応募理由、留学の志

私は2010年4月から東京工業大学工学部建築学科に在籍し、2012年の4月からは同大学院建築学専攻で建築意匠の研究を行う研究室に在籍しています。研究室のメンバーは学部・修士・博士を合わせて30名ですが、留学生は13名と三分の一以上を占め、出身国はデンマーク、イタリア、台湾、アメリカと世界各国から日本に来ています。彼らは全く日本語が喋れないため、基本的なコミュニケーションやゼミは英語で行われます。彼らとともに図面を書いたり、研究をしているうちに「海外」というものに非常に興味を持ち始めました。これが留学をしたいと思った最初のきっかけになります。

育った環境、建築に対する価値観、それぞれの国における建築家の社会的地位、様々な物が日本と海外ではもちろん違います。そして彼らと議論を重ねているうちに、自ずと「日本」というものにも関心を持ち始めました。日本の文化、歴史、経済、法律、流行、建築工法、住まい方など、彼らと会話する上ではこれらの知識は欠かせません。極端な話をするとそれらを知らないということは日本人であるというアイデンティティを失っているも同然なのです。

また、母国の文化や歴史などについて、様々な国の留学生と意見交換するということは、自分の設計活動の幅を広げ、知的好奇心を増幅させるのではないかと感じました。他国の文化を知ることで、母国らしさが見えてきますし、他国における歴史・実績を参照することで(デザイン活動における)困難から抜け出すきっかけにもなりうるのではないでしょうか。自分の将来、また日本の未来を見据えても、海外で日本の文化を発信することはもちろんのこと、海外で経験を積み、現地の建築に対する価値観、構造や環境に関する技術・設計の手法などを吸収し、それらを日本で自分なりの形で出力していくことは非常に意義があると考えます。

2014年1月にスイス在住の友人の案内でスイス国内11都市をおよそ1ヶ月にわたって案内してもらいました。スイスは永世中立国で、EU非加盟国、国際連合にも2002年にようやく加盟しました。周囲のEU加盟国からは独立(または孤立)した状態でありながら、金融・観光・精密機械など産業の水準や賃金水準、国際競争力が高い特徴も持ち合わせています。そこには海に囲まれてるという意味で孤立し、技術力の高い日本と共通項を見出すことができます。

しかし、決定的に違うことは自然環境と都市との調和という点です。もちろん日本は台風が通過しやすいという立地や、地震が多いということから津波の危険性も高いですが、スイスに比べて親水空間が少なく、そこでの空間の演出も劣っている感じました。スイスでは国民の生活は川や湖を中心としていますし、どの都市に行っても湖や川、もしくは広大な高原、山脈が臨めます。都市的なダイナミズムと自然のおおらかさが融合しているのです。そのような場所に建つ建築は堂々としていて、人びとを受け入れる空間の豊かさを持っていました。これからの日本は、人口縮小、少子高齢化が進み、今までの躍動的な成長とは違ったベクトルでの成長が期待されます。まだはっきりとビジョンが描けているわけではありませんが、そこではスイスで見たような、日本の豊かな自然資源を生かしつつ、日本が持つ高い技術力を生かした、新しい未来都市がありうると感じています。

以上のような考えから、私はスイスでの留学を決意しました。単にスイスといってもジュネーブ、チューリッヒ、ベルン、ザンクト・ガレンなどそれぞれ異なる魅力を持つ都市が存在します。1年という短い期間にインターンの合間を縫ってそれらの都市を訪ねたいと考えており、今回奨学金をいただけれることになれば、行動の幅をより広げることができます。日本の文化を海外に発信し、スイスの文化を日本に持ち帰り、自身とともに日本の成長の一端を担えるようになることを臨んでいます。

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 (↑毎年行われる建築意匠系研究室の合同花見)

 

困難を克服した経験

東京工業大学の建築学科生は学部の四年時に4ヶ月の設計期間を与えられ、卒業設計をしなければいけません。それまで行ってきた設計課題の集大成として、自分で課題を設定し、一般的に日本の建築界、又日本の未来に向けて提案します。その卒業設計で、私は多摩ニュータウンの日本最大の団地群を改修し、そこに農業都市を描くという提案をしました。卒業設計では模型制作や図面制作の補助として後輩に協力を依頼することが認められています。私は、同期の中では最大の22人の後輩や他大学の友人を率いて設計や模型作成を進めました。もちろん毎日22人と作業するわけではなく、日替わりに交代しているため実質毎日6、7人の後輩と作業をしていました。自身はわずかな睡眠時間の中で設計を進めつつ、後輩にまんべんなく的確に指示を出し、食事の手配や作業しやすい環境づくり、と想像を遥かに越えるハードさに何度も心が折れそうになりました。しかし、明るく励ましてくれる人、他の同期の誘いを断って私の手伝いをしてくれている人、雨の日も雪の日もかかさず手伝いにきてくれる人、私を支えてくれる多くの人によって卒業設計を終えることができました。そして当初から目標にしていた、学年で優秀な3作品に送られる大岡山建築賞をいただくことができました。

自分で明確な目標を立て、その目標に向かって多くの人を率いて仕事をすることの難しさやそのやりがいを改めて実感し、卒業設計を終えたときは目標を成し遂げたときの達成感と、支えてくれた人へ感謝の気持ちでいっぱいになりました。この卒業設計の経験から、今では集団で仕事をするときは自分が率いる側でも、率いられる側でも、良いモノ(作品、設計、デザイン)をつくるために自分の作業・振る舞いに自信を持って取り組むことができています。

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(↑団地群を農業都市へとコンバージョンした卒業設計の提案)

(以上引用)

留学状況、受入先について

東京工業大学大学院では交換留学制度を用いて留学する学生が大半です。しかし私は実務(構造詳細図面の作成や現場管理)を通してスイスの建築事情を勉強したいと考えたのでインターン活動という選択をしました。

一般的には、留学開始の3ヶ月前を目安に直接設計事務所に履歴書とポートフォリオ(作品集)を添付したメールを送りつけ、事務所がインターンを募集していればSkype面接をして頂けます。実際に私も約20通ほどメールを送りましたが、返ってきたのはわずかに数件でした。インターンの募集をしていなかったり、言語能力の問題などで返ってきたメールでもほとんどが不採用の内容でした。Skype面接までこじつけたのはわずか一件でその事務所になんとか採用して頂けることになったのです。

現在は図面作成や模型制作を通してスイスの建築を学ぶと同時に、自身のアイデアがどこまでスイスに通用するか日々格闘しています。半年経った今、ようやく事務所にも慣れ始め、事務所からも設計・デザイン活動においてさらなるステップアップが求められいると感じています。

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(↑Hosoya Shaefer Architectsによる工業地帯の再開発プロジェクト)

最後に

ご高覧頂きありがとうございました。

トビタテ生には熱意と行動力がある学生が学年、専攻分野を問わずたくさんいます。これから、少しでもそのような学生が増えていくように、そして彼ら(私たち)がトビタテ生として世界へ羽ばたけるように発信していきたいと思います。 これからトビタテに応募しようと思っている方で、専攻や留学先など共通点があれば多少なりともアドバイスができると思います。もちろん共通点が無くても構いません。

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